企画参加モノ


□鉢屋三郎
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ミーン ミーン…

―パラッ


ジジジジジジ…

―パラッ



夏というものは何て言うか、うざい 。暑い。


蝉は暑さを倍増させるような音を出してるし、太陽の照り様は半端ない。直射日光よりはまだマシなんだろうが、室内でもムシムシする。汗が半端なく出る、着物だってすぐに汗まみれ。手拭いで何度拭いたか分からない。


『…で、勘右衛門先輩。扇子を貸してくれないですか?暑い…。』

「やだ。俺も暑い。」

「ナマエ先輩。ここ、分からないんですが…。」

『ん?どこー?ああ!ここはねー…』

「…ところで、三郎。」

学級委員の一年生、庄左衛門に聞かれ教えていた所に 勘右衛門先輩がジトッと此方を見た。え?何?


「何だ、勘右衛門。」

「…いつまでくっついてるつもりだ?」


『あ、暑いと思ったら鉢屋先輩だったんですね。』

「別にいいだろ。いつまでだって。」


後ろから キュッとコアラみたいに抱き締められるのは初めてではない。もうずっとなんだ。でも、慣れすぎて最近は違和感なくくっついてる。だからこんな感じで気づかない。


「ナマエもちゃんと言わなきゃ、三郎が調子に乗る…否、乗ってるじゃないか。」

『いやぁ…ごめんなさい。最近、違和感無さすぎて…』

眉を下げ アハハハと笑うと、先輩は目を閉じてハァ…とため息を吐いた。


「おい、ナマエ。」

『はい、なんでしょう?鉢屋先輩。』

私の頭の上に顎を乗っけて話す鉢屋先輩。こんな格好になったのは最近だ。鉢屋先輩が成長のお陰で大きくなったから。私はというと…まぁ、ご覧の通り成長してもチビ助だ。


「縁談が来たって本当かー?」

『誰から聞いたんですか…。まぁ、本当ですね。断りましたけど。』

「色々とな…って、断れたのか!?」



いきなり バッと離れ、目を見開きながら此方を見る鉢屋先輩。そんなに驚くとこ?


『はい。私には私を愛して下さる大事な方がいるのでと言ったら、ならばしょうがないと仰って下さいました。』


私の一言に 更に目を見開き、勘右衛門先輩に顔を向けた。

勘右衛門先輩は違う違うと顔を高速で横に振る。

続けて一年生二人に向けると これまた 違うと今度は手を振られた。


『目の前にいるじゃありませんか。ね?三郎先輩。』







「……………………へ?」




鈍感すぎて分からないんだろうと思っていた。だから知り合ってから後ろから抱き締めた。嫌がられなかった。寧ろ喜んでいた。ならばと思う存分引っ付こうと思った。てか引っ付いた。邪魔な虫も近寄れないようにしていた。



まさか、私の気持ちに気付いていたなんて!!

顔から火が出るかのような いや、出る。今なら出るぞきっと。とにかく顔が熱い。………あれ?名前で呼ばれた?‥‥‥さっき。


「ささっき、な、なま名前呼ばな‥」

『先輩。私、本読み終わったのでそろそろ図書室行ってきますね。では!』




ゆっくり近づきリップ音を弾かせ笑顔を見せてからナマエは部屋を出ていった。


そこで我に返った私は熱を持った額に右手を置き、いつもと違う真っ赤な顔で後を追うように 部屋を後にした。



四年でこれはヤバイだろう。彼女の成長しつつある色の心配?焦り? そしてこれからの自分の行動を慎重にこなそうと意気込む鉢屋だった。


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