七華

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あの日俺は保険医、五月雨を抱いた事で命拾いし、寮に帰ってきた藪鎖には酷く心配されたが問題無い事を告げる俺の姿に納得したのか何時もの様に接してくる

次の七日目まで誰かを抱く必要は無い俺はとりあえず、此処最近保険医五月雨の元に訪れて華について相談していた



「お前今日三日目だったな、因みにお前が来た理由はこの三日間で予測できる……“ソレ”の事を聞きに来たんだろうが、さっぱりだな、お前も自分の事だろ?夢の中で神様だか何だかにヒント貰うとか無いのか……大体俺だって散々言ってるだろ、昔話でもう覚えてねぇし、聞きたい婆さんはおさらば……てか、病人でも怪我人でもねぇお前はどうして此処に来る、授業は如何した、サボりか?」

「……病人だったら居て良いのか、なら腹痛にしておく」

「しておくって……本当に腹が痛かったら受け入れてやるよ、さっさと教室行け…俺もこお見えて忙しいんだよ」



シッシッと払われ渋々保健室を出て行こうと丸椅子から立ち上がった矢先勢い良くドアが開き其処に立っていたのはこの学園の一匹狼で知られる男で学園内でも親衛隊が創られても良い筈の男でありながら親衛隊を唯一認めていない人物

不機嫌そうに目付きを鋭くして入口に仁王立ちする真っ赤な髪の男は俺の姿をチラリと見て睨み付けた後ズカズカと入ってきては無言でベッドへと向いカーテンをしめた



「まったく……珈実、てめぇ一言言うとかあるだろ」

「寝る」



カーテンの向こうからの声は消え、其の声に溜息を吐き今度は俺に視線を寄越した保険医は更に溜息を吐いて机のノートにカリカリと何かを書き込んで行く

立ったまま保険医を見下ろし結局教室に戻る事に決めて人気の無い廊下を歩き進んで行く先に藪鎖を見つた、あちらも俺の姿を目にし気付いた様だ



「何してんのお前、授業は?」

「お前もだろ、保健室行ってた」

「あっそ、ところでこの辺でマリモとか見てねぇよな?あのマリモしつこくてよ……教室行くか」



マリモがしつこいと言う藪鎖だがおまえが居ない間あのマリモは俺の所に来てお前の居場所を教えろと喚く、お互いに迷惑しているのか

二人並んでとぼとぼ歩いてる最中、藪鎖の携帯が震え着信を報せる、画面に出た名前を見て藪鎖は立ち止まり先へ行けと俺に言う、勿論置いて行く、藪鎖は今来た道を戻り俺はそんまま進んで行き階段の上がり切って曲がった所で誰かとぶつかる、もじゃもじゃしたマリモみたいな物がぶつかって来た



「いってぇ!誰だよお前、あ!お前!どうしてあの時一期の居場所教えてくれなかったんだよ!一期が可哀想だろ、お前今度こそ一期の居場所教えろよ!」

「立夏、この木偶の坊にぶつかったみてぇだが大丈夫か?オイてめぇ俺様の立夏に触れんじゃねぇ」

「ちょっと会長どさくさに紛れて自分の発言しないで下さい、貴方も貴方ですよ、立夏が通るのですから道を開けなさい」

「「立夏可哀想」」

「皆有難うな!でも俺大丈夫だ、俺は優しいからな!一期の居場所教えてくれたら許してやるぜ」



藪鎖とはさっき会ったが、だからと言って今度何処に行ったかなど解る筈も無い、だからはっきり知らないと告げれば地団駄踏んで喚き出す、其れを宥める周りの取り巻きはマリモを連れて何処かへ去って行くが取り巻きの1人、生徒会長だけが残りマリモ達が居なくなった所で俺の胸倉を掴む



「てめぇそうやって立夏の気を引こうとしてんじゃねぇぞ、これ以上近付いてみろどうなるか解ってるだろ」

「じゃぁ俺からも一言」

「あ?」

「マリモにこれ以上俺と藪鎖、あと五月雨も迷惑してたし近づくなって言って置けよ、其れくらい出来るだろ?互いに良い条件だ、俺は近付かない、お前だって近づいて欲しくないなら文句無い筈だし……大体どういう訳であのマリモは五月雨と藪鎖に付き纏うんだ?お前らがこんなに構ってやってるのに傲慢にも避けられてる事すら気付かずに付き纏い、お前らが甘いんだよ、大事なら囁き続ければ良い、見られたくないなら閉じ込めておけば良い、暴れるなら縛れば良い、逃げるなら足を折ってしまえ、其れが嫌なら繋ぎ止め、泣き喚くなら口を自分の口で塞いでやれ、自分のものに成るまで壊してしまえよ」

「な、んだ、てめぇ」



…………
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