世界一初恋
□然に非ず
1ページ/2ページ
「…っ…政…宗。」
荒くなった呼吸を整えながら、俺に乗っかっている政宗の名前を呼ぶ…。
好きだの…愛してるだの…。
………俺の想いは、そんな甘っちょろいものじゃない。
………政宗。
初めて出会った時、こいつの印象は最悪だった。
受験勉強から解放され、大学生活を謳歌する輩とは違い、図書室で静かに本のページを捲っているようなヤツで…。
俺も本が好きだったが、政宗の読む本ときたらジャンルもマチマチだ。
ただ、ひたすらにそこにある膨大な本を読み漁っている。
無造作な髪型や…瞳の奥にあるどこか投げやりな感情も…生まれもった政宗の容姿には、男の俺から見ても中々のものだから、少しだけ興味が湧いて思わず話しかけてしまった。
「…本…好きなのか?」
「……………。」
チラッと視線を上げて俺を見たかと思ったら、すぐに本に目を移した。
「あのさ、ふつう話しかけられたら“うん”とか“すん”とか言うんじゃないのか?」
意地の悪い笑みを浮かべると、面倒くさそうに視線を上げた政宗は
「…………。……すん…。」
間をおいて、やっと返事を返してよこしたと思ったら、また本に視線をおとした。
………なんて楽しいやつなんだ。
「………お前とは気が合いそうだ。」
不意に口走ってしまったのだが、意外だったようで…
再び政宗が顔を上げる。
「………冗談だろ。」
そう言って眉をよせると、読んでいた本を閉じて席を立った。
「まんざらでもないだろ?。」
歩幅を合わせるように隣を歩くと、政宗の横顔が一瞬緩んだように見えた。
………自分でも不思議なのだが、理性だけでは抑えきれない感情が、
若干ではあるが…鼓動となって波打っているのだ。
.