世界一初恋

□然に非ず
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「…っ…政…宗。」

荒くなった呼吸を整えながら、俺に乗っかっている政宗の名前を呼ぶ…。


好きだの…愛してるだの…。

………俺の想いは、そんな甘っちょろいものじゃない。






………政宗。

初めて出会った時、こいつの印象は最悪だった。


受験勉強から解放され、大学生活を謳歌する輩とは違い、図書室で静かに本のページを捲っているようなヤツで…。


俺も本が好きだったが、政宗の読む本ときたらジャンルもマチマチだ。

ただ、ひたすらにそこにある膨大な本を読み漁っている。




無造作な髪型や…瞳の奥にあるどこか投げやりな感情も…生まれもった政宗の容姿には、男の俺から見ても中々のものだから、少しだけ興味が湧いて思わず話しかけてしまった。

「…本…好きなのか?」

「……………。」

チラッと視線を上げて俺を見たかと思ったら、すぐに本に目を移した。


「あのさ、ふつう話しかけられたら“うん”とか“すん”とか言うんじゃないのか?」


意地の悪い笑みを浮かべると、面倒くさそうに視線を上げた政宗は

「…………。……すん…。」


間をおいて、やっと返事を返してよこしたと思ったら、また本に視線をおとした。



………なんて楽しいやつなんだ。


「………お前とは気が合いそうだ。」


不意に口走ってしまったのだが、意外だったようで…

再び政宗が顔を上げる。


「………冗談だろ。」


そう言って眉をよせると、読んでいた本を閉じて席を立った。



「まんざらでもないだろ?。」


歩幅を合わせるように隣を歩くと、政宗の横顔が一瞬緩んだように見えた。


………自分でも不思議なのだが、理性だけでは抑えきれない感情が、

若干ではあるが…鼓動となって波打っているのだ。



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