10000HIT企画

□SWEET HONEY!
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「嫌だと言っているだろう」
「何でですか!いいじゃないっすか!」

平行線の押し問答。

「以前言っただろう。某は…」
「なんで、源二郎様と自分が付き合ってること公表しちゃ駄目なんすか!」

壁と五右衛門にはさまれた状態で、幸村は小さくため息をついた。
そんな幸村に五右衛門も不満そうに眉をしかめる。

「自分、見てましたよ。この前体育で貧血で倒れた時、クラスの…名前忘れましたけどあの目つきの悪い男に抱き起こされてましたよね」
「……お主、学年が違うのによくもまあ…」

数日前の出来事だ。
ふだんから図書室に引きこもってばかり運動が得意とはとてもいえない幸村は、体育の最中に熱中症を起こし倒れた。
それを同じクラスの加藤清正に助け起こされた、それだけのことだ。

ごしめがね学園二年の幸村に三年の五右衛門。
学年も違えば、性格も一八〇度といっていいほど違う二人。
接点のないように見えるが、実は恋人同士である。
学園でプレイボーイと噂になるほど女遊びの激しい五右衛門は、常に女子の噂の中心にいた。
やれ三組の女子を抱いただの、ある男から横取りしただの。
来るもの拒まず去るもの追わず。猫のように飄々とした気まぐれな男。
そんな五右衛門が、ぴたりと女遊びをやめたことで校内では本命の女がついにできたのでは、と噂になっていた。
その本命というのが、この男・真田幸村なのである。

学園の隅でひっそりと図書室の住人となっていたい幸村からすれば渦中の人間になる事はなんとしても避けたい。
ゆえに今も人目のつかない司書室で、問答を続けているのだ。
幸村は深くため息をついた。

「とにかく、だ。某は今の生活が気に入っている。おぬしと噂になろうものならこの平穏な暮らしが奪われてしまうだろう。それは嫌なのだ」
「でも、源二郎様っていう恋人がいるって証明できれば自分もう女の子に言い寄られることがないんですよね」

「う…」と小さく幸村は声をもらす。そう、五右衛門はモテる。兎に角モテるのだ。
女遊びを止めてはいるが、言い寄る者は後を絶たない。
幸村自身、告白現場を目撃したことさえあるのだ。
たれ目に泣き黒子。182cmという高い身長は人目をひく。
仮にも恋人である幸村もいくら色事に淡泊とはいえ、ふわふわとしたかわいらしい女子に告白されているところを見れば、気になるのだ。
ただでさえ、自分は男だ。
不安にもなる。

一方五右衛門としては、幸村を己の物だと幸村を狙う者たちに向けて見せたいという欲もあった。

「源二郎様は自分が女の子に告白されたりするの、別にいいんすか」
「……それは…」
「源二郎様」
「嫌だ…だが、目立つのも…嫌なのだ」

視線をそらせて、言う。
すると、五右衛門は顎に手をそえ考えたような仕草を見せたあと悪巧みをしている子供のように笑った。

「……じゃあ、源二郎様だってバレなきゃいいんすよね」
「は…?何を言って」
「いつかプレイの時にって思ってたんすけど」

五右衛門のバックから取り出されたものに幸村は絶句した。

「恋人の特権と、先輩命令っすね、源二郎様」
「………」
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