10000HIT企画

□蜂蜜
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「はあ…はあ…」

明かりの落とされた室内に熱のこもった吐息が響く。
部屋の中央に転がされた幸村の瞳は今は布で覆われており、不安そうに眉を寄せていた。
折れてしまいそうな白く細い腕は頭上でまとめられ、帯の先はその様子を楽しそうに眺める男の元へあった。

「良い格好ぞ、源二郎」
「兄上っ……」

視界が闇に覆われた幸村は兄の居場所も声を頼りにするしかなかった。
どうしてこんな事になったのだろう。
街を歩いていた最中、突然路地裏に連れ込まれ訳のわからぬうちにこの有様だ。
兄が相手では抵抗など意味のなさないこと。仕方のないことかもしれないが、己の迂闊さに嫌気がさす。

「なにゆえ、このような……あうっ」

問いを投げかけたと同時に突然頬に何かが垂らされる。
ひんやり、どろり。
同時に香る甘い匂い。
その香りに幸村は数日前の事を思い出す。
猿飛が土産だと持ってきた甘味、蜂蜜と同じものであった。
南蛮より来た珍しい甘味だと聞き、興味本位で口にしたのだがあまりの甘さに喉が焼けるような思いをしたのだ。

「咎を忘れ忍びとたわむれたそうだな…源二郎。悪い子だ。そんなに仕付け直して欲しいのか」
「ひ…!!!」

しゅるり、と帯がほどかれる音が響く。
視界の塞がれた状態では次に何をされるのか分からず、いつもより過多に反応してしまう。
帯のぬかれた着物はすでにただの布となり、幸村の体を覆い隠す役目を放棄していた。
信之の冷たい指先が肌をなでる度、火照った体は強く反応してしまう。
幸村の反応に気をよくしたのか、その赤く染まった耳元で信之はくつくつと笑った。

「淫乱なそなたのことだ…ほかの男に抱かれて慰められていたのではないか?」
「っ!して、ません…兄上以外と、など…」
「ふっ…どうだか、な」

暗くて、怖い。
次に何をされるのかもわからず、知らず敏感になる。
冷たい指先が胸の飾りにたどり着くと、淡く色づくそれを強く摘んだ。

「いあっ!…や…あうっ」

ぎりぎりと強く爪をたてられ、痛みに体をよじる。
走る痛みに耐えようと唇を噛みしめていると、突然足首を持ち上げられ膝が胸につくほど折り曲げられる。
それと同時に先ほどの甘い香りが部屋に充満し、まさか、と嫌な予感を振り切るように幸村は必死に抵抗しようとするが、それも空しく秘所に蜂蜜が垂らされた。

「やっ!!」

ひんやりと秘所から侵入してきたそれを中へ塗り込むように、ずぶり、と容赦なく信之の指が挿入された。
外から侵入してきた異物を押し出そうとうごめく体内の動きに気をよくしたのか、信之は布で覆われたその目元に口づけを落とす。
そして、その次に訪れるであろう衝撃を恐れてか、ガタガタと震える幸村の体を押さえつけると、構わず腰を掴みその蕾を貫いた。

「ああ、あああああ!!!」
「くっ……」

体が悲鳴をあげているようだった。
潤滑油がわりの蜂蜜で慣らされたとは言え、久しぶりの行為だ。
必死に逃げようと体をよじるが、手を拘束されたままではまともに動く事もできず腰が艶めかしく動くのみとなってしまう。
まるで誘うような動きに信之は満足そうに幸村の頭を撫でてやった。

「いだ、い…っ兄うえ…あう…ううう」

腰を捕まれ、深くえぐられる。
ぐちゅぐちゅ。
艶めかしい音とともに広がる甘い香り。
まるで脳内までぐちゃぐちゃに溶かされるような錯覚。
しかし、兄にならされた体はやがて痛みの中に快感を見つけ始める。
前立腺をこすられる快感に、身をよじると同時に信之の動きがとまった。
突如、遮断される快感。

「あ、兄上ぇ……」

こぼれた言葉はまるで、ねだるように甘い。

「わかる、だろう?」

とろけるような甘い声。
何度も兄に抱かれ慣らされた体は寸前でせき止められた快感を、そのままにしておける訳がなかった。

「ください…」
「ん?」
「動いて…ください…。もっと…もっと兄上を、ください…」

快感にとろけた甘い声に誘われるように、信之は再度幸村の体へ覆い被さった。






「おーい、真田。秀吉様から土産をもらったぞー!」

突如目の前に差し出された甘味。
にこにこと機嫌良く、目の前に猿飛。秀吉様からの贈り物に嬉しそうだ。
甘い香りがただようそれは、先日の蜂蜜とは違うもの。しかし、嫌でも先日の兄との行為を思い出させた。

「う…」
「?真田、どうした?」
「いや…それはお主一人で食べるが良い。某は書斎に戻る」


「なんだよ、変な真田」

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