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□おヨメさま
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―オレは今、監禁されている。仄暗い室内、ではなく、満遍なく日差しが入る見た事のある和室。手足には拘束具、なんて物はなく自由に動ける。飯は質素とは無縁の栄養バランスの良い食事。オレがここ数日食ってた物よりはるかに品数が多い。睡眠時間は制限され、きっちり七時間。就寝前の運動は欠かさない。もちろん健全な方、ではない。
「 んふふ〜 」
「機嫌いいな…」
「朝起きてもひじかたがいる幸せ♪」
「…おはよう」
「はい、おはようのちゅー」
「ん…」
おはようのキスもお休みなさいのキスも慣れた。ベタな事に恥ずかしさを覚えるが、そんなもんより笑って怒る銀時が恐い。
―四徹から五徹へ移行しようとした晩、淡々とした足音からのゆったり襖を開け見えたのは笑顔の銀時。抑揚のない「 土方 」に底知れない恐怖を感じた。半ば引き摺られて連れてこられた万事屋で監禁、という名の休養をしてる。実に快適な監禁生活を送っている…仕事の話をしなければ。思い出すのはよそう、精神がすり減る。
「ちょい早いけど朝ごはん食べる?」
「いや、もう少しお前といる」
「う〜ん…二十点かな。そこは「朝飯よりお前を食うぜ」ぐらい言ってよ〜」
「(自分の)あまりのウザさにくたばるかもしれんがいいのか」
「ええ〜、言って欲しいなぁ。銀さんメロメロになるかもしんないよぉ?」
「…腹が減っては戦は出来ぬって言うだろ」
「やだ…!後で打ち負かしてくれるなら百点!もち性的に!」
「酔ってんのかてめぇは」
「 十四郎に酔ってんぜ… 」
「ドヤ顔と美声発揮すんな」
「お手本です。さ、ヤってみましょ〜」
「あいよー………」
機嫌のいい銀時には逆らわないに限る。別の事を考えようものなら瞬時に察知して急降下からの絶対零度、底冷えする。ならば楽しむだけだ、どうせ満更じゃねぇんだから。
うつ伏せ寝転んでこっちをニヤニヤしながら見てる銀時の前髪を上げ、額にデコピン一発。
「いだっ!思ってたのと違うぞコノヤロー」
「次にキスしようと、」
「よぉし来ーい。どこにシちゃってもいいよ!」
「なら…目、閉じろ」
なるたけ甘い声で囁いて顔中にキス。このままもつれ込めそうな程にうっとりしてる銀時に高難度のお願いをしてみる。
「銀時、聞いてほしいんだが…」
「 ダメ。 と言いてぇとこだけどぉ、銀さん気分いいから聞いてやんよ」
「ああ、その、だ…そろそろ行ってもいいか?」
「…気分は」
「おかげ様で最高だ」
「…明日からなら許可したげる」
「ああ、ありがとな。身体は元気になった」
「ふーん…ん?お?もしかしてきちゃう?悩殺ボイスきちゃう?耳元でお願いします」
オレのやりたい何事を一瞬で理解してくれるのは有り難いが難易度を上げるのは止めていただきたい。銀時の願い通りにいくよう出来るだけの良い声で耳に囁く。甘噛みつき。
「 銀時が足んねぇ、腹一杯食わせろ 」
「ああんっ、ほ、骨までしゃぶり尽くしてくださぁい…!」
「おう。だからその為の活力を下さい」
「任せて。腕によりをかけて性のつくメシを作るから!」
「色んな意味でオメェがうまくて元気になるわ…」
「えへー。色んな意味で堪能してねん」
グッと親指を立てて清々しい笑顔でうっすら鼻血出して台所へ消えた、パンツ一丁で。そこはいつも通りなのでツッコまない。