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□誘き寄せて私を見つめて
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−やっちまったぜ、やっちまったんだぜ。万事屋じゃない天井、ぶっちゃければK点越えた時の(ドッキリだったから!)同じ様な部屋。言うなればラブホテル。しかもマッパ。パンツさえも履いてない。周りには散乱した自分の衣類と、見たことのある制服…。お隣に気配もある、チラチラと黒髪の頭が…。
(もしかしてもしかしてなのかぁぁぁ!!)
記憶がスコーンと抜けた脳内で覚えてることは、馴染みの店で、仕事帰りのアイツと正体が分からなくなるまで呑んで、「今夜は寝かさないぜー!」と酔っ払い同士らしく肩を組んで次の店へ入った所で途切れてる。
(お、おち、おちつけっ、おちつこう俺っ!)
れれ、冷静になればヤバい状況も自分のターンに…!
「 …ん、 」
ひぃぃぃぃ!起きた!?起きちゃったの!?いやこれは寝返りだ、すぐ寝息が…聞こえてこない!ああ布の擦れる音が、掛け布団が動いてる。ああ目線が、目線がめっさ痛い。チラッと見えるコイツも肌色なんだけどォォォ!
「…おい、万事屋」
(ええええ!?ナニそのなんも焦ってませんな声はあああ!)
「 おい? 」
(呼ぶなコノヤロー!見ちゃいけねぇ光景が広がってそうでぇ!)
「おい天パ。天パみてぇにもだもだしてねぇで返事しろや」
「ンだとコラァ!天パバカにしてんじゃねぇぇぇ!!」
「聞こえてんじゃねぇか、天パ」
「天パ天パうっせぇよ…っ!?」
「あ?なんだよ」
やっぱり裸ァァァ!何でコイツ慌てねぇの?何で冷静そのものなの?まさか慣れてるとか?何ソレ腹立つ。ニコチンマヨ中毒のクセに顔だけはいいもんな。俺だけ焦って頭抱えてんのにコイツときたら…土方ときたら澄まし顔でタバコ吸いやがる。てめぇフォロ方ならフォローするかツッコむかしろよ。泣くぞ。
「泣きそうになってるとこ悪いが何にもなかったぞ」
「−…へ?だ、だってっ」
「確かに如何わしい場所で…てめぇだけ全裸だがなにもな」
「おめぇもだからね。パンイチでも変わんないからね」
「全裸よりマシだ」
どっちも同じだろの言葉は飲み込んで発端を聞いた。
酔い潰れた俺をかろうじて生きてた土方が屯所も万事屋も面倒いと近くにあったホテルへ。お優しい土方は水を飲まそうと俺を起こして、暑いとの理由で脱いだらしい。土方が裸なのは自分だけはイヤだと俺が脱がしたらしい。んで即寝と。
「金は払っといてやる。後は好きにしろ」
「てめぇはどこ行くんだよ」
「シャワー浴びて仕事だ」
「…んじゃ、寝るわ」
「ああ。なら枕元に置いとくぞ」
あっさりしてんな。…ちょっと残念とか思っちまったことに気付きたくなくて布団を被って目を瞑る。シャワーの音、着る音、ドアの閉まる音。何も言ってこない静かな空間に、またもやその感覚が蘇ってきた。頭を振って誤魔化し、時間ギリギリまで寝た。そして後日−