その他小説

□俺の本気!
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「 土方せんせぇ、ココ分かんねぇ 」

「 ん、どこだ? 」

「 ココー 」

「 ああ、ここな。えっと… 」


大学の講習の合間と小遣い稼ぎで始めた家庭教師のバイト。両親が友人の頼みと言う事で引き受けた。最初はヤンチャなガキが相手と聞いて止めようかと思ったが、それも杞憂に終わった。

銀髪で緋眼の目立つ容姿とは裏腹に素直に机に向かう。その分教え易く、成績も普通がみるみる上位に。親御さんも手放しで喜んだ。今までこんなに続かなかったらしい。


「−…こうだ。分かったか?」

「そっかぁ、後は頑張ってみる!」

「おう、頑張れよ」


ふわふわの銀髪天パを撫でれば緋眼が嬉しそうに細まる。

もくもくと取り組むコイツは坂田銀時、小学六年生。中学受験と今後を考え雇われたのがオレ。といっても親の友人なので受けたけで正規のバイトではない。成績が上がったら賃金を払うとのこと。けど、それとは関係なく生徒の努力が実を結ぶのは喜ばしい。


「ねぇ、土方せんせ。約束覚えてる?」

「あのなぁ、来る度言やぁ忘れねぇっての」

「だって、楽しみなんだもん」

「其も此もお前の頑張り次第だな」

「 よおぉぉし! 」


叫ぶ銀時と、中学を無事合格したら遊園地に連れてけとせがまれた。合格圏内だったけど遊園地くらいならとOKした。ら、まさかこんなに張り切るとは思わなかった。「そんなに行きたいか」と言ったら「土方せんせぇと行きたいの!」と言われた。慕われてるのかと、悪い気はしない。

勉強を頑張れば遊園地でも何処でも連れてってやると頭を撫でると抱きついてきた。嬉しいを全力で表現してくる姿に、一人っ子のオレは弟が居たらこんな感じなのかと笑って抱き止めた。


「ふんふーん♪土方せんせぇと〜、遊園地〜」

( こんだけ慕われりゃあ絆されるってもんだろ )


鼻歌を歌いながらも筆は進んでいる。器用だなと感心する。撫でくり回したい衝動を抑え、時間まで勉強を続けた。予習復習忘れるなよと常套句を言って教科書を閉じる。

待ってましたと言わんばかりに「先生ー!」と叫び飛び込んでくる。反動で後ろにあるベッドに座る。


「お前のそのジャンプ力はどこから来るんだ」

「せんせぇに会えたからに決まってんじゃん!前の日とか楽しみで眠れないもん!」

「勉強が楽しみとか珍しいな」

「もぉ!せんせぇのことだって言ってるのにぃ!」


ぷくーと頬を膨らませオレの頬をつねった。その顔に笑うとむぅと拗ね、つねる力がちょっと強くなった。お返しに両手で膨らんだ頬の空気を抜いてやった。ぷっと間抜けな音が出て更に笑ってしまった。つねる手が叩くのに変わり、さっきより膨れっ面になった。


「せんせぇひどいー!」

「悪い悪い。お前が可愛くてつい、な」

「 か、かわいいっ? 」


ただ一言で拗ねてたのが嬉々となる。ポッと白い肌が林檎みたいになり、紅い眼がキラキラと宝石の様に輝き出す。

本当に素直に喜ぶなと歓心する。いや、男に可愛いはどうかと思ったが良かった。


「えへへ。じゃあせんせぇは俺、好き?」

「 ああ、好きだぞー 」

「 ! 俺もっ。土方せんせぇカッコいいから好き!」


カッコいいから好き、か。この頃は歳上に憧れる時期だ。大方勉強、運動が出来るとか、容姿とかか。オレの場合は憧れや好意を持たれても『思ってたのと違う』と言われて終わりだ。慣れたけどな。
 
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