その他小説

□どっちが危ないでショー
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「ひ、土方君!あの、良かったらコレ…」

「あー…。甘いもんは嫌ぇなんだ」

「い、いらなかったら捨ててもいいから受け取って!」


はい!と押し付けられ、反射的に持ってしまった。それを受け取ったと勘違いして顔を赤くし走り去ってく。これはもう仕方ないとして問題は…。女子と話していた頃から放たれてた、怒気を通り越した殺気。冷や汗が流れるのを真に感じながら後々の事を考えて振り向く。


( 昼なのに何で薄暗いんだ…っ? )


見開いた紅い眼、仄暗く光る銀髪が狂気染みた表情を際立たせる。その人は女子が走り去っていった方をジッと見据え、逸らさずオレの元へと歩いてくる。この時の緊張といったら他に比べようがない。オレの前で立ち止まり、目線は手元のお菓子へ。


「…どうすんのソレ。土方くん甘いの嫌いだよね。食べるの?嫌いなのに?…あの子だから?」


感情の無い声で、手を伸ばしてくる。辿り着いた先は可愛らしい菓子袋。抵抗する気は無いので先生に渡す。冷めた眼は細まりグシャリと潰れる音。

コレはマズい。とんでもなく怒ってる。自分の耳は、昼休みなのに生徒の声も何も拾わない。極度の緊張で周りの喧騒が遮断されるのは、先生がキレるとしょっちゅうなる。早々に弁解しないと何をするか分からない。


「コレは押し付けられただけで甘いものは先生が作ったのしか食わねぇし、先生の以外イヤだし、あんな女知らねぇから」


これでさっきの先生の質問は全部答えた。証拠に先生の表情がちょっと和らいだ。殺気も…多少和らいだ、と思う。怒気くらいに。アレがないからか。袋をグシャグシャにしながら穴が空きそうなほど見てるのはアレをしてないからか。

先生とはそういう間柄だが、昼休みの、廊下で、セクハラ。先生嫌がってねぇけど。むしろ手首ひっ掴んで際どい所触らしてくるけど。


「せ、先生。せめて鍵閉めれるとこで…」

「 −…イヤなんだ 」


あ、ヤバい。怒気が消え失せた代わりに悲観に歪んだ。紅い眼に狂気が戻った。


「イヤなんだキラいなんだ俺がキラいなんだ。あの女?あの女のせい?だからイヤになっ…!!」


こうなった先生は止まらない。どこまでも後ろ向きになってオレが動くまでヒートアップして早とちりする。一番有効な対策は口を塞ぐこと。手で塞いだら不満分を舐められたり噛まれたり舐められたりするから自ずと口になる。いや、しか残らない。


「 んっ、ふぃ、んーっ、んん〜… 」


塞ぐ、というより覆う。先生は逆らわず両腕を首に回して身体を押し付けくる。学校の廊下で学校の先生とのエロいキス。恋人だとしても不祥事なのは承知の上だが、先生を放っておく方が由々しき事態になる。人の気配の無い今がチャンスだ。先生直伝のキステクで腰砕け…出来たらいいなと気合いを入れて舌を動かす。

隙を与えずに掌で頭を押さえて口で息をさせないように攻める。すると回してる腕が緩んできた。足にも力が入らなくなってきたのか膝が曲がってきてる。完全に力が抜けるの前に口を離す。先生の表情も気配も蕩ける甘さのものに。


「 オレは銀八先生が好きだよ大好きだ。女は全く関係ねぇからンな奴よりオレだけ考えろ 」


今度はこっちから見つめると、うんと頷いた。ならばとこの場を逃げるように腕を引いて準備室まで走った。いつの間にか落ちてた菓子袋はちゃんと拾っておいた。嫌な顔した先生には後で目の前で捨てるからと納得してもらった。

−入ると同時に先生は直ぐに鍵を閉め抱きついてくる。そして絞めてくる。力の強さで好きの深さが分かるから嬉しい反面かなり痛い。普段はだるだるの割りには筋肉質な身体をしててクソ痛い。
 
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