その他小説
□銀猫の日
1ページ/5ページ
こんにちは、坂田銀時です。以前の後遺症で猫になってます。
万事屋にいたら怪力娘に捻り潰されるから、そう潰されるから此処に、仕方なく会いに来てやった。猫だけどね。長い付き合いながら知らないことってあるもんだ。付き合い出したのは出逢ってちょっと後で、片や多忙の真選組副長サマ。中々ゆっくり出来ないのもある。さびしい…だろうと思って猫な銀さんが会いに来た。
基本優しいこの男は追い出しはしないと乗り込んでみるとまさかの歓迎。好物だろうと魚を、喉が渇いてないかとミルク。そして撫でるわ撫でる。撫でる手が気持ちよくて指を舐めたら微笑とくる。猫好きか、大好きか!
「 人懐っこいな、お前 」
「 なぁー… 」
撫でる手ヤバい。全部がツボで喉が勝手にゴロゴロ鳴る。恋仲の、土方の手だからだろうか。
動く手が止むとふわりと身体が浮く。抱き上げられ、視界には瞳孔の開いてない(!?)土方の顔。
「…眼が死んでる猫っているんだな」
「うなぁっ!(どういう意味だっ!)」
「お、怒った。人の言葉分かんのか?」
…見たことない笑顔ばっか。ケンカも楽しいけど、おっさんだけど、付き合ってんだから少しくらい、欲を言えばいっぱいイチャ…ついてもいいんじゃないかってね、一般的にね。
「眼の色は赤いし、毛は銀色、毛並みはふさふさか。アイツみてぇ」
「 にゃー…?(アイツって…?) 」
その顔は、俺、に、向けられたって思ってもいいよな…?
猫を愛でる眼じゃなく、恋人を思わせる顔つきが近付いてきて。額にちゅっと、もふっと、柔らかいものが。一度じゃなく二度三度ちゅーとかおいコラ鬼の副長その緩みきった顔はなんですか目尻下がりまくってる面とかかわ、ばかじゃないの鬼に謝れ。
「 ふわふわ 」
「 に、にぃ…っ 」
おめぇからンな単語が出るなんて思いませんでしたぁ!
もふるのが終わったと思ったら下ろしてからの肉球ふにふに。器用にたまに撫でる。おいお前、お前ってやつは仕事人間のお前が何してんの?お前コノヤロー名の通り猫可愛がりしやがってコノヤロゥ仕事忘れてんのか、時間忘れてんのか。ちょっとぐらいそれを銀さんにしようと思わねぇのか。
「ゔー…(ムカつく…)」
「機嫌悪くなったな…。構いすぎたか?」
すごく残念そうデスネ。まぁ、ウザかったし?気持ち良かったけどウザかったし?自然と尻尾が床叩いても仕方ないな、唸っても仕方ない。落胆してる表情してもダメだから、眉尻下げてもかわいいとか思ってないから。
「 じゃあ仕事に戻るか… 」
おいコラ鬼なイケメンしゅんとすんじゃねぇよ。にゃんこ大好き過ぎんだろ。全部の猫に対してそんなんか。
また来いよと一撫でして机に行く。始終優しい眼してたんですけど。あるぇ?こんな表情見たことあったっけぇ?一旦仕事モードに入るとソッチに集中してポツンと一人(一匹)。…うん、帰る理由は無いし、もうちょっと構ってやってもいいかな。
「にゃあ(土方)」
「なんだ、帰ってなかったのか」
「うにゃ(撫でろ)」
胡座の間に入り、置いてある手に擦り寄る。ゴツいけどスラリとしてる掌に身体全体を強めにくっつけるともふっと撫でる。柔らかい雰囲気に眠気が近づいてくる。
「気分屋なとこも似てんな。でもお前の方は触らしてくれんだな」
撫でた後はひょいっと抱き上げ腕に収める。え、なにこの今世紀最大の笑顔は。あと聞き捨てならない言語聴こえたんだけど。銀さんが触らせないだと?おめぇが触ってこねぇんだろうが。付き合ってから教えるくらいタッチとちゅーだぞ。あ、数えてないよ?なんとなくだよ?
「にゃあ、にゃー…(ひじかたの、バカー…)」
「何グズってんだ、眠いのか?」
やっぱいじり過ぎたかと笑ってちゅーして膝の上に下ろす。愛でまくりの微笑みまくりの土方は、あやすように撫でながら筆を動かしてる。眠くなったのは安心から、だとしても機嫌が悪くなるのは扱いの違いから、それと、猫じゃ伝えられないから。眠気の中で見えた手の甲にムカつきを込めて引っ掻いてやった。フッと笑ってたから痛くなかったのか、ちっ…。いいし、元に戻ったらドロップキックしてやる。
今は、その手に委ねて一眠りした。