その他小説

□嫌よ嫌よも好きの内
1ページ/4ページ


「 俺、おめぇのコトでぇきれぇだから 」

「 ああ、知ってる 」


毎回毎回、出会う度に言われりゃそう答えたくもなる。

とんでもない確率で出会うコイツは天パでマダオな気に食わない、万事屋の坂田銀時。裏の裏の裏を読んで行動しても一緒になる。何も考えずに行動した方がいいんじゃないかと店の扉を開けたら死んだ眼の男の顔が歪む。必ずそいつの隣しか空いてないとくる。帰ろうとすれば雨が降り、諦めて座れば罵り合い。合間に真面目なトーンで嫌いだと吐く。


「 土方なんかキライ 」

「 そうか。分かったから黙って呑め 」


一体何のつもりか知らないが、そう何度も言われて何とも思わない訳じゃない。つかちょっと…いや、かなり傷付くんだが。

機嫌の良い日は喧嘩のない、静かに会話を交わす呑みになる。嬉しそうにガキの話をしたり、オレの愚痴をタイミングの良い相槌で聴き手にまわる。その時見せる笑顔が脳に残り侵蝕していき終いに心を埋め尽くされた。惚れたと、気付く前と後じゃ痛みは天と地の差。


「 キライ、だぁいきらい 」

「分かった分かった。オレも嫌いだから黙れ」


じゃあ隣に座るなよ。オレが先に店に居る時は他んとこ空いてんだろうが。素面で言いやがって、泣きそうだってぇの。


「 −っ 」


酒を煽りながら呼応するように呟くと、息を詰める音が聴こえる。酒を含みながら横目で伺うと、それはもう全力で吹き出しそうになった。何とか抑えようとしたら代わりに器官に入り咳き込んだ。

なんで、なんでコイツ、泣いてんだ!?


「 ひぐっ 」

(ええぇぇえぇぇぇぇ〜!?)


マジか、マジなのか。え?あの万事屋が?ムカつくことにオレより強ぇコイツが?天パでマダオが??からかってんのか?そうか!酔ってんのかっ?素面だと思ってたのはオレの気のせいか!?男に泣かれるとか初めて過ぎてどうしたらいいか分かんねぇんだけど!?


「お、おいコラっ、泣くなっ、な?」

「…キライ、キライ!おれのこと、キライって言う土方キライ!!」


お前が先に言ったんだろうが!?泣きてぇのはオレの方だ!


「冗談に決まってんだろ。嫌いじゃねぇから」


店先で泣かないでくれ。親爺も何で仲良いねぇみたいな顔してんだよ。何でコイツ涙拭かねぇんだよ。オレか、オレがすんのか。拭くもん持ってねぇよ。袖でいいか。


「 おら、こっち向け 」

「 む… 」


すんすん鼻を啜りながら足の上で拳を握る。流しっぱなしの涙を拭ってやると端をパシッと掴む。


「 優しい土方はスキ… 」


微笑む万事屋は可愛かったが、優しいオレの言葉に鳥肌が立った。

んで、………あ?スキ?


(えええぇぇ〜!?!?)
 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ