ツナ攻め小説III

□霧幻
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「 紛れもなく僕ですね 」

「 能力も何ら変わりありません 」

「 …… 」


能力とかそんなのどうでもいい。骸が二人になったことが大問題だ。幻覚であってほしい。そんな訳にもいかずご本人達は悲劇的な現実を突いてくる。悲劇的なことに俺の超直感も本物と告げてる。骸が二人とか、頭も胃も痛い。能力は変わらないらしいが、外見と雰囲気に違和感がある。


「お前の方、瞳の色が反対だな」

「えっ?あの、つなよしくん…っ、恥ずかしいですよ…」


…なんだ、この反応。こいつホントに骸か?違いを見付ける為に近づいただけなのに真っ赤になって逸らすって、恥じらい方がまるで乙女…。二人になる前の骸だったらむしろ迫ってくる。間違えた、現在進行形で迫ってきてる。


「それ以上近寄ったら殴る」

「まだ何もしてません!」

「お前、いつもより邪な気が漏れてんだよ」

「酷いですね、僕はただ近づいただけです!」

「 殴られたくなかったら座ってろ 」


死ぬ気じゃなくても骸は殴れる。でも大人しく座ってるから拳は収めたけど。あと何でかもう一人の骸も座ってるんだよね、青褪めて。


「お前に言ったんじゃないよ?」

「す、すいません。ちょっと、ビックリして…っ」


な、涙目になってる。骸が…、何しても這い上がってくる骸が弱気になってる。えー…、えー?なんか可愛い。分裂したら性格も二つになるのか。


「 お前は可愛いな 」

「つ、つなよしくんっ、ち、近いです…っ!」

「キスするだけだろ」

「んっ…」


唇が離れた後、真っ赤にして手で隠す。恥ずかしそうに、嬉しそうに笑顔を見せる。軽くしただけなのにここまでしおらしい反応するなんて可愛いな。大違いだ。


「 …失礼な事考えてません? 」

「あ、バレた?だってお前こんな反応しないじゃん」

「僕がしたら気持ち悪いでしょう!それに、アレだけでは足りないです」


鼻息荒く、ジリジリ近づいてくる。前はもうちょっと隠れてた気がする。俺の超直感の前では形なしだったけど。

不穏な空気を出すし距離を詰めるこいつぶん殴ってやろうかなって思ったけどもう一人の骸が怖がってしまう。なんかそれは地味にショックだから我慢しよう。


「ふむ…彼も役に立ちますね」

「だからって調子に乗んなよ。あ、お前はいいよ?」

「ぼ、僕ですか?そ、そうですね…えっと…」


多分思い付いて赤くなってるんだろう卑しくないのは何でだろう。外見は同じ骸なのに。抑えきれず撫でてみると更に言葉を濁す。


「贔屓は許しませんよ!僕にも何かして下さい!」

「土下座したら考える」

「お願いします」


こいつ、プライドは無いのか。嫌な素振りは全く見せず、いい顔で何ともキレイな土下座。獄寺君より上手いんじゃない?などと皮肉ってる場合じゃない。もう一人の、可愛い方の骸も正座してる。ってか三つ指ついてる。


「お前はしなくていいって」

「は、はい。ですがこの方が頼みやすいです」

「ああ、そう…」


根本的な中身はあまり変わらないのか。まぁ、止めないけど。またキレイなお辞儀でお願いしてくる。うわぁ…面白い光景。二人になった骸が俺に土下座とお辞儀してる。


「分かった分かった。えーと…」

「どうしました?」

「よく考えたらどっちも骸だから呼ぶのどうしよう」

「大丈夫ですよ。分かりますから!」

「あっそう。じゃあ俺は様付けでいいよ」


俺への対応を考えると強ちウソじゃないか。なら、呼び方は変えなくても大丈夫かな?


「あの、僕は何て呼んだらいいでしょう…?」

「普通でいいよ?」

「そ、そうですが、"綱吉君"は馴れ馴れしくないですか?」


君付けで馴れ馴れしいって、呼び捨てとかあだ名はどうなの。まぁ他の人はいいか。多分この骸は別の呼び方にしたいんだろう。


「 綱吉様は僕のですよ! 」


おっとマジで呼んでる。冗談だって言うの忘れてた。人を疑われそうだが悦んでるみたいだからいいか。友達と知人以外ツッコまれることはないだろうし。
 
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