ツナ攻め小説III
□曇り空
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「 目障りだよ 」
「 危ないな。彼に当たったらどうするの 」
「 …… 」
むしろ当たって気絶したいです。ヒバリさんが二人になったのは夢でした、とかならないかな。
−事の発端は応接室に銃を構えてやって来たリボーンだ。撃つ気満々なリボーンにヒバリさんが眼を輝かせるもんだから逃げ出したい。そしたら俺が狙われるからしなかったが。見事な攻防だったけど弾の中の一発が跳弾だったらしくヒバリさんにヒットした。
そしてこうなった。
「 消えて 」
「 しょうがないね。落ち着くまで移動してようか、沢田君 」
「 …え。さわだ…"くん"? 」
可笑しい状況に現実逃避してた俺は一気に戻された。
縦横無尽にトンファーを振り回すヒバリさんと、その攻撃から何故か守ってくれるもう一人のヒバリさん。前者はいつものヒバリさんだと思う。でも、俺の前で守りに徹してるヒバリさんは…誰?さわだ君って、俺のコトだよね?
「呆けてどうしたの?」
「い、今の、俺なのかなーって…」
「君も他人行儀だと思うよね。何て呼んでもいい?」
「…えーと、」
穏やかに話してる所悪いんですがそれ所じゃない。ヒバリさん同士なのか攻防が一向に終わらない。和やかな会話が普通に思えて…きちゃいけない。
「ああ、ごめんね。まず僕の変えないと言いにくいよね」
「は、…ヒバリさんじゃなく?」
「恭弥でいいよ」
「きょ、きょうや、さん?」
「呼び捨てで「っ無視、するなっ!!」
ガキィィン!!派手な金属音が鳴り響いた。振り下ろした一撃は非常に重かったらしく…恭弥さんの表情が歪んだ。
「…っ、今のは、効いたよ」
「同じ顔して沢田を誑し込まないで」
「君が暴力を振るうからでしょ」
「沢田、こっち来ないと咬み殺すよ」
「え、えと、」
ど、どうしたらいいんだろう…!ヒバリさんの方はいつも以上の傍若無人っぷりを目の前で見て、これは行かないと咬み殺される。恭弥さんは、ヒバリさんには皆無の穏やかな表情と雰囲気を纏ってる。一言で表すなら温和。
「あ、あの、恭弥、さんすいません…っ」
「うん、いいよ」
ニコリと微笑んで道を開けてくれる。手を取って立たせてもくれた。な、なんか紳士みたい。俺がしないとならないコトをサラッとされてる。ショックは後で受けるとして。
「 ヒ、ヒバリさん、っ、 」
「 そんな手で触らないで 」
パシッと手を払い、ドカリてソファへ腰掛ける。端っこに座ってるから間を開けて真ん中に座る。何も言わないのでいいんだと落ち着く。同時に恭弥さんが俺のすぐ傍らに座る。
「 自分で言っておいて酷いね 」
「 あ、あはは… 」
何て答えたらいいか分からない。これでも付き合ってるんだよなぁ…。玉砕覚悟で告白して、OK貰った時の嬉しさといったら…。全然触らせてくれないのは生殺しだけど。
「 呼び捨てなら僕に触っていいよ 」
「 へ? 」
綺麗に微笑んで、また俺の手を取り、頬に引き寄せる。きめ細かい肌してるってのがよく分かる。誘惑に駆られそうだが条件が厳しい。呼び捨て…。
「僕は何て呼んだらいい?綱吉君?綱吉さんも良いね」
「 綱吉 でお願いします 」
俺が呼び捨てにするのは決定なんですか。ヒバリさんを恭弥と呼ぶのにも抵抗があるのに、君付けやさん付けなんてされた日には注目の的。二人になった時点で注目どころか大騒動だ。
「 呼んでくれないのかい? 」
えっ?か、悲しそう?は、初めて見た。そりゃそうだ。恭弥さんの表情はヒバリさんでは絶対見れない。二人になったとはいえ、俺の好きな人。堪んないモノがある。
誘惑に負けて綺麗な人の名前を呼ぼうとしたら凄い力で掴まれる。
「うわっ!ヒ、ヒバリさんっ?」
人が居ると言えばヒバリさんしかいない。だけど俺は混乱中。触るなと言ってきた人に抱き締められる。しかもかなり痛い。
ヒバリさんの行動に恭弥さんは少し驚くも、すぐフワリと笑う。ヒバリさんの表情は見えない。