ツナ攻め小説III
□キャンディスマイル
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ホワイトデー、彼ら曰く三倍返しじゃ少ない。ちなみにバレンタインにチョコ貰ったのは俺。更に服もプレゼントされた。そして更にお返しまでしてくれそうになったので喜んで遠慮した。
バレンタインで泊まらないまま仕事に帰ったディーノさんは、ホワイトデーに向けて片付けてるらしい。ロマーリオさんによると、当日に来れるとの事だ。当日まで缶詰めだから暫くテレビ電話は使えない。獄寺君はケータイで部下の人とやり取りしてるらしく、たまに近況報告してくれる。俺は14日がくるまでお菓子作りの練習をした。あの二人の三倍返しなんて一介の中学生では自殺行為。
−朝から一緒に居られる様にとディーノさんがこっちの休日に調整してくれた。彼らが来るまでに母さん直伝の色んな種類の洋菓子を作るのに取り掛かった。大量に作ってるのは一応二人以外にも貰ったから。獄寺君から連絡があり、それまでには余分に作れた。丁度、外もガヤガヤと…先月よりも随分と多い気がする。…今日は物が溢れそうだ。
「 ツナっ、会いたかったぜー! 」
「 愛しの10代目ぇ!お会いしたかったッス! 」
良かった、何も持ってない。俺の言った通り手ぶらだ。
「久し振りです、ディーノさん。俺も会いたかったですよ。獄寺君は毎日会ってるよね」
しがみついてくる二人の背中を撫でながら周りを見る。部下の一人ずつが控えめなプレゼントを持ってる。何故か女性も混ざってるけど多分母さん宛てだろう。
二人に母さんが待ってると伝えキッチンに招いてる間にチョコのお返しをしておく。顔写真(名前入り)付きだったから渡すのは簡単だった。全部配り終え、家へ入ると入れ代わりに母さんがニコニコ笑顔で、やっぱり作ったお菓子を持って出ていった。こっちの二人も移ったのか笑顔で俺を迎える。背景に花飛んでる。向日葵飛んでる。取り敢えずお花畑の二人を部屋デートに誘う。好みに合わせて作った、獄寺君用の甘さ控えめと少し甘くしたディーノさん用をそれぞれ用意してある。反応は、お花畑にキラキラのエフェクトが加わった感じ。
「スゲェな!オレ等とは大違いだぜ」
「あはは、まぁ簡単な物ですけどね」
「…それさえも出来なくてスイマセン!」
「ほら、俺は先生がいたし」
母さんの教えで失敗を最小限に抑え、OKが出るまで結構かかった。基礎は叩き込まれたから、レシピ通りなら作れる様になった。
「食べて感想聞かせてくれる?」
「ありがとうございます10代目!それと、申し訳ありません!本来ならこちらが花嫁修行をしないといけないんスが…っ」
「気にしなくていいから!」
「大和撫子ってヤツだな?オレでもなれるか?」
「多分なれますけどならなくてイイです」
部下の前でなら多分。獄寺君はマニュアル通りとか。そんな本あんのか?
「これはバレンタインのお返しとしては物足りないかもしれないけど…」
「じゅ、10代目、オレが勝手にしてるだけッスから後ろめたく思わないで下さい!」
「逆にもっと貢げぐらいに、」
「無理言わないで下さい。…逸れたけど、お金は使えない代わりに愛をいっぱい込めたよ!」
満開の笑顔のお返しに、俺も笑顔で告げる。先月言った意味と同じだと想いを乗せて。
目敏く拾った二人は大袈裟に感動する。その場に項垂れぶっ倒れる。倒れるなんて可愛いもんじゃなくぶっ倒れる。一番最初に心配したのは床。大丈夫かな…。
「痛くない?」
「もっと痛くてもいいッス…!」
「謙虚じゃねぇツナもいいな…!」