ツナ攻め小説II
□私に触れて
1ページ/4ページ
ツナに好きだと告げて、ツナも応えてくれて恋人になり一ヶ月が経った。それなのに、今までと全く変わらない。恋愛として好きだとちゃんと確認した。
好きだと言えば好きと返してくれる。手を繋げば、笑ってくれる。けど、それ以上がない。セックスはおろか、キスもない。
(オレじゃ燃えねえのかな)
ツナより背が高いし、ゴツい。女子みたいに可愛くもない。
(ツナの好きだったヤツとは真反対だもんな)
でも、ツナはオレと付き合ってる。望みはゼロじゃない筈だ。ツナだって、キスもセックスも興味があると言ってた。 オレとするのは? とは聞かなかったけど。
いい感じになった時もあったのに、毎回かわされる。
(そうだ、ツナをその気にさせればいーのな!)
ツナだって嫌じゃねえ筈。
「―はぁ〜、山本の家は落ち着く」
「ははっ、ツナの家は賑やかだしなー」
ツナの家じゃ決行出来ないからオレの家に呼んだ。取り敢えず、調べたり人に聞いたりして情報を集めた。合ってるのか効くのか分からないが、やってみる価値はある。
(先ずはいつも通りスキンシップからなのな)
肩に腕を乗せ、顔を寄せる。
「ツーナ。映画観ようぜ」
「いいよ。何の映画?」
ツナは全く動揺してない。やっぱこれは慣れてるからダメか。
「人から借りたのな。面白いらしいぜ」
「タイトルは無いんだな。どんなの?」
「オレも知らねえ。まあ、観てみようぜ」
ゲームの電源を入れ、借りたDVDを入れる。内容は聞かされてないが、恋人と見ると盛り上がるらしい。どんな中身かはなんとなく分かってる。
(どんな反応すっかな)
内容は男女のラブストーリーだ。始めはそうでもない、中盤からラブシーンが濃くなってきてる。
ツナを見れば、固まってる。
恋人達は想いが通じ合い、喜びのキスを交わしてる。可愛いキスじゃなく、舌が絡み合う大人のキス。
「うわあ…スゴいキス…」
(オレもしてえのなー)
ツナとあんなキスしてみたい。激しくイチャイチャしながら、顔を寄せて髪に指を絡める。お互いを求め合う、そんなキス。ツナの舌とオレの舌が交わり、熱い息を零す。その吐息を感じたい。
「えっ…!」
想像に浸ってると、ツナが驚きの声を上げる。画面を見れば、先程キスをしていた恋人達が服を脱ぎ始めてる。AVじゃないと聞いたから、いわゆるベッドシーン。
(いいなぁ…)
ツナは驚いただけで、何をする訳でもなく只ジッと観てる。
(何もしねえのな)
ツナが何か行動するのを待ったが、あの後ひたすらイチャイチャする男女を観ただけだった。
キスか押し倒されることを期待したけど、手さえも触ってくれなかった。
興味があるって言ったのは嘘じゃねえよな…。
(ちょっと、ヘコむ…)
「な、なぁ、山本。お前、内容知ってたの?」
「内容は知らなかったのな」
(気付いてたけど)
「 ああ…やっぱり 」
あれ?ツナの様子がおかしい。なんか、残念そう。 効果ありか?
「ツナ?」
「んー? 他にも観んの?」
「や、そうじゃねえけど」
気のせい、か?普通になってる。
(戻んの早えのなー)
またゼロからか。
キスもオレから誘えば簡単だ。付き合ってんだから、ツナだって応えてくれる、と思う。でもそれじゃあ今までもこれからも全部オレから。
「山本、疲れた顔してるけど大丈夫?」
(誰のせいだと思ってんだよー)
一回でもいい。ツナからしてくんねえかな。
「なぁ、イチャイチャしようぜ」
ツナを引っ張り、オレの膝の上に座らせる。ツナは小さくて軽いからスッポリ収まる。
「…何でこの体勢なんだよ」
「丁度よくね?」
「……」
この体勢じゃ顔は見れないけど、拗ねてる? ツナはオレの膝の上に座るのが好きじゃないみたいだ。