ツナ攻め小説II
□私に触れて
1ページ/4ページ
好きな人に、恋人に触られたら誰だって身動きがとれなくなる。今まさにその状態。
眠っていらっしゃる10代目に悪戯心が芽生えた罰なのか。寝ている10代目があまりにも可愛らしいから、頬にキスをしようとしただけ。バレないよう気を付ければ大丈夫と、何故そんな考えになってしまったのか。
「 ん〜… 」
(ひいぃ〜!!)
―そう、オレは10代目に抱き締められている。
キスしようとした瞬間、引っ張りこまれた。身動きしようとすれば、10代目を起こしてしまうかもしれない。けど、この状態は…。
(か、顔が燃える…!!)
愛しの10代目がぎゅうっと抱き付いて擦り寄ってくる。脇の下に腕を回し、首辺りに10代目のお顔がある。そのせいでオレの首に10代目の寝息がかかる。くすぐったさと他の意味で声が出そうだ。
この事態と、一向に起きない10代目。10代目に触ることが出来たらと思っていたが、触られるのは予想外だ。頬や髪に触れるなんて可愛いものじゃなく、全身ピッタリとくっついている。
「…あっ!」
思わず出た声に口を塞ぎ、10代目を見る。
(良かった…起きてない…)
声が出てしまったのは、10代目の脚がオレの脚に絡んできたからだ。そこは色んな意味でヤバい。ピッタリ抱き枕状態で擦り寄られると、行為に慣れてる身体に痺れが走る。
「ぅん…ごく、でらくん…」
「じゅ、じゅうだいめ?」
名前を呼ばれ、それに答えるが返事はない。
(ね、寝言、か…?)
オレの名を呼びながらニッコリ笑っている10代目。本来なら喜ぶところだが、夢じゃなく今目の前にいるオレを見て笑ってほしい。願望はあっても10代目を起こす勇気はない。
(10代目、起きて下さらねえかな…)
10代目が動く度、身体が反応する。はっきり言えばシたくなった。
「えへへ〜…」
「 10代目 」
一度身体が熱くなってしまえば止められない。10代目じゃないと、治まらない。音量を上げ、10代目と呼ぼうとすれば、ニッコリ笑顔で、
「…いただきます」
「 え? じゅ、うっ! いってえっ!! 」
叫んだのは仕方ないと思う。10代目がいきなりオレの首に噛み付いてきた。最初は思いっきりだったが、その後はガジガジ甘噛みされる。
(ヤベェ…気持ちいいっ…!)
「んん〜…? ん!? うわあっ!!」
「あっ!」
10代目がガバッと起き、オレから離れる。ぬくもりが無くなり、寂しさからつい声が出てしまう。パニックになってる10代目は気付いてらっしゃらない。
「え?え!?な、なんで獄寺君が!?」
「遊びに来たのですが寝ていらしたので、お、起こそうとしたら…」
嘘は言ってない、筈。キスも未遂で終わった。
「引っ張ったんだね、俺…。通りで抱き心地がいいと思った…」
「あ、ありがとうございます」
10代目が安眠出来たのなら抱き枕冥利に尽きる。オレはそれどころじゃなかったが。
「あっ!ご、獄寺君っ、俺が噛んだとこ見せて!」
「えっ、あ、はい。ココっス」
痛かったのは最初だけで、ぶっちゃけ気持ち良かった。むしろもっと噛んで…、とは言えない。10代目は心底心配して下さっている。不謹慎なことを考えてしまった自分が恥ずかしい。
「ごめん…くっきり跡が残ってる…」
「いいえ。こういうのなら幾らでもして欲しいのですが…。10代目、どんな夢を見てらしたんスか?」
オレの名を呼んで、甘噛みされて。エロい夢なら大歓迎なんですが。
「(なんか凄いこと言われた気が…)まあ、察してる通り…」
「エロい夢っスか!?」
「えっ!?ち、違うよっ、獄寺君が持ってきたお菓子食べる夢だよっ」
「ああ…なんだ、菓子っスか…」
10代目のお家にお邪魔させていただくのに手ブラは失礼だ。必ず10代目の好きなお菓子を持っていく。
(今回はそれが仇になったのか)
オレの夢じゃなく、オレの持ってきたお菓子の夢。やはり10代目は可愛らしい。
「そ、そんなに残念…?」
「はい」
「即答ですか…」
申し訳ありません。残念なことに即答です。