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□銀時くんの成長記録
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開いた距離を摘めて両手で顔を掴み眼を合わせる。睨み付けて逸らして、不機嫌で口を窄める。無意識の仕草なのか。それともそのキスで済ませろって事なのか。
後者に倣って触れるだけのキスをしてみる。ぎゅうっと瞑った眼が開かれきょとんとなった。違うか、と舌を入れてみる。シャツの裾を掴むだけで押し返しはしない。これは四回目に入るのだろうかと不安が過るが戸惑う銀時が可愛かったので堪能した。
「 どうだった? 」
「 …口ん中ぜんぶ、たばこ味 」
そう言った後は喋らず、机に向かうオレの背中に背中をくっつけてジャンプを読んでいる。新八達が来ると依頼をこなしに出掛けていった。オレは書類をキリのいい所で終わらせ巡回に赴いた。
―何事もなく屯所に戻ると、気の抜けた声での「おかえり」が待っていた。「ただいま」と返し「帰らねぇのか?」と聞くと「面倒見るつったじゃん」と耳ホジ。強みに叩いた。
「未来の恋人様になにすんだコノヤロー」
「クソ生意気なんで副長様直々に調教してやろうかと」
「なにドS王子みてぇなこと言ってんのっ?それは俺みてぇなドSがヤらねぇとっ」
「うるせぇな。誰がテメェらみてぇな性根の腐ったやり方するつったよ」
「ンだとこんにゃろう。ドSがガラスのハートだって知ってケンカ売ってんのかこらぁ」
「今のでかよ、どんな脆さだ。まぁ安心しろ、恋人用だから」
「こいびと…。どれどれ、銀さんが審査してあ〜げる」
「イラつくんで黙ろうか」
黙るかどうかは置いといて正面から抱き締めてみる。ビクッとして手を行き場なくさ迷わせてる。黙るもんだなと歓心してると銀時は呻き出した。顔も手も困惑した様子でぶつぶつ「なにこれ…」「どうすりゃいいの…」と言うので早速指導。
「手はどこでもいいから回せ」
「ま、まわす?こう?」
「肩を回してどうすんだ。もうオメェは肩に手ぇ置いとけ」
「うーわ…スッゴい恥ずいんだけど。口から砂吐きそう」
「お前なら砂糖吐けるんじゃねぇか」
「うぎゃあ!だからってくっつくなぁぁぁ!」
「おい、そこは首に腕を回すとこだぞ」
「ええぇぇ〜…!あっ、そか!プロレスね!」
「夜のプロレスは戻ってからな」
「ちっがーう!てめぇも大概Sだなコノヤロー!」
「耳元で騒ぐんじゃねぇよ…。ハァ、キス出来たら口塞げんのによ」
心の底から思った事を言うと、絶句した銀時はオレの肩に頭を打ち付け「もう勘弁して下さい…!」と呟いた。大分ダメージ受けた様だし、痛いのはオレが満足したから帳消しにしてやろう。そう言って頭を撫で離れれば「ありがとうございますぅ…」と四つん這いになり、名前を呼ぶとバターンッとデカい音を立てて突っ伏した。新鮮な反応すんなと数分眺めた。オレが見ている事に気付いた銀時は散歩してくると出ていった。
―帰ってきた時にはいつも通りで、オレは仕事、銀時は気ままに過ごしていった。そしてやっとの事で…。
「ただいま〜。貴方の愛しの恋人、銀さんのお帰りですよ〜」
「あ、ああ…。で、何でその体勢なんだ…」
「 た だ い ま 」
「 お、おかえり… 」
戻ったのだろう当日の朝、寝苦しくて眼が覚めた。飛び込んできたのは馬乗りになる愛しの恋人の笑顔。…怒ってる方の。朝っぱらから美味しい状況なのに素直に喜べない。
ま、守ったよな?ちゃんと約束守った、筈。自信がないのは心当たりがある訳で―。