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□銀時くんの成長記録
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―様子を確認しながらの仕事で時間は黄昏時。そろそろ飯にするかとぐっすり眠る、と思ったら起きた。いつも寝ぼけ眼の癖にハッキリとオレを見てるが起きないし、喋らない。やっぱ寝ぼけてんのかコイツ。
銀時、と名を呼んだら少し身体を震わした。それだけで喋らず動かない。だが腹の虫は違ったようで盛大に鳴った。堪えきれず笑うとムッと睨む。
「腹減ったろ、飯食うぞ」
「 ………… 」
「何やってんだ銀時。おい、起きたんだろ、おーい」
返事はないがいい加減腹減ってきた、強制的に連れて行くとしよう。素早く近付いて布団を引っぺがす。小さい身体を抱き食堂に、行ってる途中も腕の中で大人しくしてる。そん時は然程気にしなかったが、隊士が話しかけても、飯の時も全く言葉を発さない。あの口から生まれた男がどうしたのだろうか。
副長室までの道のりは手を差し出してきたので繋いだ。部屋へ着いてもそのまま座る。そして口を開いた。
「 ……アンタ、だれ? 」
―…あっ。ああ…うん…忘れてた。数時間前に目の前に知らん人がどうのこうのって話したばっかじゃねぇかコイツが変質者扱いしたら警察行きじゃねぇかオレだっつのココだっての危ねぇ。ンな事より状況説明してやんねぇと、すげぇ訝しんでる。取りあえず手を離して手紙を…。
「オレは土方十四郎つぅもんだ。これ読んでくれりゃ理解できると……どうした?」
「べつに……読めばいいんだろソレ」
「ああ。読めねぇ字があったら言え」
「ぜんぶひらがなだから読める」
「それは逆に…いや、終わったら声かけろ」
「 …… 」
返事なしかコラ。まぁ叫ばないだけマシか。
ガキの前で煙草を吹かすわけにもいかず暇をもて余す。相手を覗いてもいいのだが不躾に見て不審がられるとか地味に傷つく。感じる視線は気づかない振りで明後日へ向いとく。が、すぐ声がかかった。
「アンタが世話係りってかいてあんだけど」
「…そんな感じだ。他には何て書いてある」
「ふかく考えんなとか、とんしょ?のヤツらはコキ使えとか…あとは、…〜ごにょごにょ」
「らしく適当だな…。最後はよく聞こえなかったんだが…」
「い、いーじゃんべつにっ」
怒るというより恥ずかしくて言えるかの銀時と同じ表情でそっぽを向く。何が書いてあったのかはこの際置いといて、やはり前も今も銀時は可愛い。警戒されてなければ撫でまくるのに。解くには甘い物か。
どうやって手懐けるか思案中、胡座の上に重みが。イスにしてんのかと思えば対面してる。ん?思いの外?懐かれてる?見上げてくる眼に警戒の色は見えない。試しに触れてみる。
「 柔らけぇー 」
「 んぎー、ひっひゃるなぁー 」
「何言ってんのか分かんねぇ」
「 ぷーにーるーなぁ! 」
「いやお前、これを触るなっつうのは無理だろ触り心地良すぎだろ」
「…くすぐってぇ」
「文句以外言えんのかコラァ」
柔らかい頬を引っ張って、ふにふに摘まんで、指を滑らせて感触を楽しむ。文句を言う割には嫌がらずここにいる。記憶がなく知らない場所にいきなり居るというのは辛いだろうから、安全だと伝えておこう。
「 大丈夫だ、安心しろ 」
「な、なんだよ急に…」
「ああ、アレだ、ここに居ろって事だ」
「 ! …ちゃんとメンドウ見ねぇとおとなの俺にチクるからな」
「それは勘弁してくれ。存分に甘やかしてやるから、仕事以外」
「 ……しごとバカ 」
「るせぇ、溜まるともっと構えなくなんだろが…。あ゙〜やりたくねぇ」
「ぎゃあっ、抱きつくなぁ!」
いつもより柔らかい天パに顔を埋めてちっこい身体を強めに抱き締める。形だけの抵抗に本当に後ろ髪引かれてしまう。そんな訳にもいかず、お前はどうすると聞くと「ここにいる」そう言って銀時が置いてったジャンプを読み始める。暇になったら隊士で遊べと付け加えると「…おに」と笑った。