その他小説

□元より負け戦
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「 ……キスさせやがれ 」

「 イ・ヤ・だ・ 」

「 …てめぇ 」

「お、ヘタレ方くんが怒った」


嫌がらせか!今度は此れ見よがしに笑いやがった、しかも指差して。人の神経を逆撫でするのが得意で口では勝てない。キレて押し倒せば強烈な蹴りを食らう。一応ヤる事はヤっているが、快くではない。


「 …はあ〜 」

「 うっとおしい 」


誰のせいだコラ。恋人ってこんなんか?−……いや、こんなんだな。男同士で、おっさん同士で、似た者同士。コイツの好きな甘味のように甘ったるいなる事はない。


「ヘタレ方くんがどうしてもって言うなら銀さんにキスしてもいいよ?」

「いらねぇ。あとその呼び方止めろ」


いつもなら飛びつくエサにも反応する気がおきない。落ち込んでるわけじゃないが、乗っても乗らなくても同じ展開になると分かっているなら、今日でなくてもいい。


「ふーん、銀さんのお誘い断るんだぁ。もう一生ないかもよ」

「そりゃ残念だ」


と言って、なにかしら強請る時に自分を使う。オレが銀時に弱いのを知ってるからだ。どうせこれからも付き合っていく中で使ってくるだろう。

口寂しさが紛れる言葉遊びを楽しんでいる(相手が)と急に影が差す。眼を開ければ至極楽しそうに笑っている。


「どうしたのかな〜?ヘタレ方がもっとヘタレになっちゃってぇ」

「誰かさんのせいでな」

「えー?銀さん全然分かんない」


わざとらしく肩を落とし両手を上げる。オレの怒りを買おうとしてるのか仕草が大袈裟だ。本当に誘っているのか、ただ馬鹿にしてるのか判断が、…推測しなくても後者だと言えるのは恋人ととしてどうなのか。


「 土方くん 」


甘さを含んだ声でオレの名前を呼ぶ。馬鹿にする為上げた腕は首に絡まり、覗かれた距離より近くにいる。視線だけ向ければ嗤っていた顔が不満そうに。


「 面白くない 」

「 ざまぁみろ 」

「…生意気、ヘタレ方のくせに生意気ぃ!せっかく俺がここまでやってんのにさっ」

「……そうか、そんなにオレにキスしてぇんだな」

「はぁ?んな訳ねぇだろ。調子に乗んな!」


思った通りの反応。

銀時はオレの頭を容赦なくぶっ叩き、ソファの隅にドカリと腰を掛ける。舌打ちしてるが顔は赤い。横目で様子を見ていると銀時が少しこちらに向く。視線を戻すと、いきなり蹴られた。無意識に唇をつついてたらしい。何すんだと睨むと舌を出して寝転がる。


「何だ、寝んのか」

「ヒマなもんでね」

「布団持ってきてやろう」


特にする事もないからソレも一つの手。そう思い寝室にと立ち上がろうとするが銀時の足が邪魔をする。退けようとしてもびくともしない。


「おいコラ天パ、足どけろ」

「おめぇのこった、寝てる銀さん襲う気だろ」

「 し ね え つってんだろクソ天パ。好意ぐれぇ素直に受け取っとけ」


今度は簡単に退いた。んな警戒する程オレは襲ったか?したとしてもほぼ返り討ちされたような。どんだけ飢えてんだって話だが、コイツを前にすると理性を保つのが難しくなる。今はアレだ、冷静になってるからだ。決して落ち込んでるからじゃねぇ。
 
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