durrr(戦争)■

□失ったもの2
1ページ/3ページ


池袋にある廃工場で
幼い顔立ちの少年がドラム缶に腰掛けて
ケータイを触っていた。

「おっそいなあ帝人先輩」

彼は黒沼青葉だ。
ブルースクウェアのメンバーであり、
創始者でもある。

「ん〜…この前みたく、不良に
せびられてなきゃぁいいんだけど…」
はあ、とため息をついていると、
携帯のバイブが鳴りだした。

「…帝人先輩からだ!」
青葉は嬉しそうにケータイを
ひらいて内容を確認した。

すると、相変わらずの短文で
一言「ごめん、遅れる」と
文字が並んでいた。

メールが来ただけでも
満足したらしい
青葉は恋する少年のように
にやにやと笑いながら
返事の文章を作り上げていく

「…わかりました。
着いたらメールください、っと……送信っ」

約束まで時間が開いたため、
連絡があるまで
暇つぶしにでもいこうと、
青葉は工場の出口へ歩をすすめた。

が、

入り口に
誰かが立っていた


「あんた……誰?」


「お前が黒沼青葉…だな?」


茶髪の少年は青葉を睨んだ
その眼差しからして、
簡単に通してくれそうにもない。

「だったら、どうする?」

青葉は挑発的に少年を睨み返した。売られた喧嘩を買うような輩ではないのだが、なんとなくこの男にだけは舐められたくなかった。

「俺は紀田正臣だ。」
紀田正臣は煮えたぎる怒りを
腹の内に沈めるような

重みのある声で青葉に
告げたが、

「紀田……──へぇ?あんたが」
青葉は
正臣をジロジロと眺め、
笑っている

「いいか、一度だけ聞く…
───帝人は…どこにいる?」
この時、もし青葉が
少しでもうごいたら
正臣は直ぐに飛びかかり、
気が済むまで殴りつけるつもりだったが、本能的にそれにきがついているのか、青葉はピクリとも動かずに鼻を鳴らした。



「あの人は用心深いからね…
今、住んでいる場所さえ
教えてくれないんだ
…俺にすらね」
今まで笑みを浮かべていた青葉の表情が微かに曇る

「じゃあ、今すぐ呼び出せ」

正臣は青葉の胸ぐらをつかみ
ギリリと歯を食いしばった

「そう慌てないでくださいよ?丁度俺、今日帝人先輩と
待ち合わせしてるんです…」

だから、と笑って
正臣の手を振りほどいた

「先輩から連絡がくるまで
少しくらい待てよ?
…紀田正臣」
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ