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□理吉の地獄蝶飼育日記
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理吉の地獄蝶飼育日記 序



地獄蝶とは随分とおどろおどろしい名前だけど、そんなに怖いものじゃない
現世の揚羽蝶だって黒っぽくて大きくてよく見るととても綺麗で品がある、あれとよく似ている

ちがうのは現世の蝶は花の蜜を吸うのに忙しいけれど
地獄蝶は伝言を伝えることで与えられるわずかな霊圧を得ることに忙しいだけだ

地獄蝶は各隊ごとに飼われていて僕のような平隊士が世話をしている
地獄蝶たちは鬼道なんかの術式とはちがって生きているので、よく見るとそれぞれに癖や性格がある

寄り道をしない仕事の速いヤツやよく迷子になるヤツ、
どうやら余所の隊の地獄蝶に懸想してそこに紛れ込んで帰ってこないヤツまで様々だ

地獄蝶は主に隊長格のあいだの連絡用に使われている
一般の隊士は班単位で動くことが多いから自分宛に地獄蝶が来ることはない

そもそも地獄蝶は自分の斬魂刀を持たない浅打程度の死神の霊圧を覚えてくれないのだ
それを分けてもらっても美味しくないのかもしれない

そのかわり隊長格の霊圧は一度で覚えてくる
強い霊圧の隊長格は地獄蝶たちにはそれぞれに味のちがうご馳走に見えているのかもしれない


そうするとやはり地獄蝶にも一匹一匹の好みのご馳走があることがわかってくる

例えばうちの地獄蝶たちはそろって朽木隊長の霊圧が好きみたいだ
朽木隊長の仕事から帰ってくるとみんな羽がつやつやして見える

反対に艶が失われて疲れた様子で帰ってくる仕事もある
行き先がどこかは言えないけれど…

だいたい僕が地獄蝶の仕事の中身なんか知るはずもない
ただなんとなく帰ってきた方向や、かかった時間からあっちかな?と思うだけなのだ


だから、地獄蝶の世話をしていると日頃は雲の上のはずの隊長格がなんとなく身近に思えたりする
これはそんなお話だ


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