book2

□たつき+織姫
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たつき+織姫(ギン乱)



「なぁ、織姫。一護のヤツは本当にもう、ぜんぜん見えないのか?」

あれから一護は学校に戻ってきた
かわりに朽木さんがいなくなっていた

「うん。見えていないみたい」

織姫が困ったような悲しいような顔をして返事をする
でも一度は話さなきゃならなかった
あたしたちの身に起きたことの全部を


あの時、あたしたちが助かったのは偶然だったと思う

あの白い服を着て茶色の長い髪をした化け物に追い詰められたとき
観音寺とあたしたちを救ってくれたのは
見たことのない、ずいぶんと綺麗な女の人だった

その女の人は一護とおなじ黒い着物を着てた
織姫が言うにはあれが死神らしい


その次に助けてくれたのはあの化け物といっしょにいた白い着物を着た男だった

その男は助けてくれたっていうより、あの化け物を倒す機会を狙っていたようだった
それがたまたまあたしたちが今度こそやられそうなタイミングと重なったからあたしたちは助かったんだ

化け物と男の戦いは
あたしにはまるで見えなかったし
そもそも押しつぶされそうな圧力に意識を保つので精一杯で
なにが起こっていたのかわからない

気がついたら男が倒れていて、化け物には羽まで生えていて
化け物が男にとどめを刺そうとしていたんだ


そこに先に助けてくれた金髪の綺麗な女の死神が降ってきて
まるで化け物なんか見えていないみたいに
男に覆い被さって叫んでたんだ

あれは一体なんだったんだろう


「あの時さ、一護が来るまえ、あたしたちを助けてくれた白い着物の男は死んだのか?」

「…たぶん」

織姫はさらに悲しい顔をする

「あいつは藍染ってヤツの仲間だったんだろ?
それがなんであんなことになったんだ?」

「わからないよ、たつきちゃん…」

織姫は言葉少なだ
でも本当のことを言っていて、本当に悲しんでる

織姫の身に起きたことや織姫の力のことはわからないけど
こういうことなら確かめなくともあたしにはわかる

「織姫はあいつらと知り合いだったのか?」

「…うん。藍染さんと市丸さん、白い着物の男の人…とは虚圏に連れて行かれたときに少し話したよ。
綺麗な女の人は乱菊さんって言って、
まえに冬獅郎くんとふたりで家にしばらく住んでたんだよ」

悲しげにしていた織姫がそれでも少し笑うから
その乱菊さんってのと冬獅郎くんってので暮らしたのが楽しかったんだろうとわかる


織姫は家や家族のことには敏感だ
あたしの家にいっしょに住んだらいいとずっと思ってたけど
死んだ兄貴の思い出と暮らしてる織姫に家に来いとはなかなか言いだせなかったんだ

だからそのふたりが織姫と楽しく過ごしてくれたのならあたしも嬉しかった

「なんで教えてくんなかったんだよ?あたしも遊びに行きたかったよ」

「そうだよね、でも乱菊さんと冬獅郎くんは死神だから…」

「ああ、そっか…」

織姫があまりにも当たり前に話すから忘れていた
あたしは最近まで見えていなかったから織姫も話せなかったんだ

「ふふ、乱菊さんはね、あたしの料理を喜んで食べてくれてね。
あたしの考えなんかすっかりお見通しって感じのお姉さんみたいな人なんだよ」


「それでね、たつきちゃんのことを話したら
いい友だちがいるのね
って言ってくれてね」

「たつきちゃんは黒崎くんの幼なじみなんだって言ったら乱菊さん、
言葉に詰まってちょっとだけ悲しそうな顔をしたの…」

「なんでだ?」

「わからない。誰か思い当たる人がいたんじゃないかな…」

「でね、たつきちゃん。
これは私の勝手な思いつきなんだけど、たつきちゃんの話を聞いたときに真っ先に思い出したのがそれなの。
つまり倒された白い服の男の人、市丸さんが乱菊さんさんの幼なじみだったんじゃないかって…」

「…なんだよ、それ?
幼なじみで敵味方に別れて戦ったのか?
敵対してたのにやっぱりまた裏切って戻ろうとしたら斬られたのか?」

「よくわからないけど…」

織姫の突拍子もない話に驚く
織姫の話が突拍子もないのはいつものことだけど
この子は他人の立ち入ったことをとやかく言ったりはしない
少なくとも織姫はそう思ってるってことだ

あたしにはわからない
わからないけど、死神ってのはわけのわからない力で化け物と戦ったり空を飛んだりするのに
織姫の口から聞くと笑ったり優しかったり、まるで人間と変わらない

まぁ一護もそうだからもう、あんまり変だとも思えてないんだけどさ
それに幼なじみなんて関係まであるらしい
.

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