book2

□七緒+京楽(+リサ)
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七緒+京楽(+リサ)



「七緒ちゃんは読書が本当に好きだよねぇ」

仕事中の執務室で脈絡もなく隊長が声をかけてきた

「なんですか?急に」

本当はそんなことよりも仕事を片づけてほしいが
相手は一応隊長だから仕方ない

「いやぁさあ、七緒ちゃんがまだ小さいときもリサちゃんと本読んでたでしょ。
リサちゃんはやっぱり僕の影響で読書好きになったのかなぁって」

「…隊長、そんなに本がお好きでしたっけ?」

お酒と女性の方がよほどお好きに見えますが

「そうだよ。藍染たちと戦ったときにリサちゃんに会ったって言ったでしょ。
あのあとね、リサちゃんは今でも大の読書好きだって愛川くんが教えてくれてねぇ」

やけにニヤニヤしてる隊長に疑問は残るが
矢胴丸副隊長は私にとっても大事な人だ


読書を好きなままでいてくれたなら私も嬉しい

もう会えないのだと聞かされて泣いて過ごした幼い日々もあったが
生きていてくれて、おまけに読書好きで繋がっていられたのだったら私は果報者だ


「リサちゃんとは趣味もあってねぇ、本の貸し借りもしてたんだよ」

隊長がそんなに熱心に読書していたとは初耳です

「今はもう読まれないんですか?」

「う〜ん、だいたい読んじゃったし実践も大事だからね」

私に向かって隊長は片目をつぶってみせる


隊長の表情にあまりいい予感はしないが
隊長と矢胴丸副隊長の思い出をひとつ聞けたと思うと胸があたたかくなる

あの事件以来、隊長と私のあいだで矢胴丸副隊長の話が出たことはほとんどない
だから貴重なのだ


それでつい、いつもはニヤニヤしてるときの隊長には絶対にしない深追いをしてみる

「どんな本なんですか?」

矢胴丸副隊長が読んでいたなら私も読んでみたい

「ん〜。リサちゃんに聞くといいよ。この先きっと会えるから」


ニヤニヤをやめて会心の笑みを浮かべた隊長に安堵しながらも
言外に今更ながら隊長の優しさを感じて思わず頬が緩む


「でも七緒ちゃんもそんな年頃になったんだねぇ。僕、心配だなぁ。本当に心配だなぁ〜。」


…なんだか急にこれ以上は聞きたくない気がしてきた
聞かない方がいいと頭の中で警報が始まる

「では隊長こちらの書類を」

これ以上なんか言ったら縛道で口を塞ぐとか
破道の予備動作をしてみるとか
即座に切り替わった物騒な思考を込めて言葉を放つ

「あれ。七緒ちゃん、なんだか顔が怖いよ〜」

隊長は少しは効くどころか嬉しそうだ


でもまぁ、仕方ない
いいことを聞かせてもらったお礼に少し時間が早いがお茶でも煎れて差し上げよう

言葉にはしなくとも隊長も私もずっと矢胴丸副隊長のことが心にあった

これからはいつかまた会いたいという願いに期待を込めて抱いていても虚しく過ごすことはないのだ

珍しく隊長も私も少し浮かれていた



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