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□ひより
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あの戦いのあと、みんなしばらくぼぅーっとしとった
うちもやから人のこと言えへんけど、みんなそれぞれに思うところがあったんやと思う
宿敵の藍染が倒されて捕らえられたんやから当然か
みんな少なくともこの百年とちょっとはそのためだけに生きとったんやからな
リサは享楽隊長と会っとったみたいやし
ハッチも浦原のとこの大鬼道長に会いに行ったみたいや
ラブはいつも通りにリサのエロ本読んどったけどエロ本が逆さまやったし
ローズも心ここに在らずや
拳正と白は自分らを陥れた元部下の墓参りに行くとか行かないとか揉めとったし
真子なんぞどっか消えてしもた
あいつのことやからきっと近所でうじうじしとるんちゃうか、アホなヤツや
みんなおんなじやねんからみんなで考えたらええねん
この先どないするかってな
うちかていろいろ複雑なんや
あのチビやった藍染んとこのガキに斬られたいうんに卯の花隊長がうちの命を拾うてくれたらしい
卯の花隊長は仲間やから当たり前やて言うたらしいけど、やっぱりうちも礼のひとつも言いに行かなあかんやろなぁ
せやけど卯の花隊長、おっかないから苦手やし
ｿｳﾙｿｻｴﾃｨなんぞ二度と行きたないしなぁ
それにうちを斬った狐目のガキ（もうでっかいｵｯｻﾝになっとったけど）
あいつ、藍染に斬られたんやてな
用済みになって後ろからばっさりやられたんやったら
ざまぁみろて笑ろうてやるんやけど
ガキの方から藍染に仕掛けたらしいやないか
それってどないやねん？
うちを斬っといてなんやねん
うちのこと舐めくさっとるやろ
今まで生きとってここまで誰かに舐められたんは初めてや
藍染よりも腹立つヤツや
せやけど、せやねんけど藍染みたいにただぶち殺したるて思うだけやないんや
あいつは憎いだけやない
なんやようわからんもやもやしたもんが胸に残るんや
うちはあいつのことを気に掛けたことなんぞなかった
真子の隊の三席やったんは知っとったけど
真子のおらんとこで話したこともないし、話しかけられたこともない
ただ真子と話すときにあいつが一緒におって、ついでに言葉を交わしたくらいや
うちは藍染にはめられるまでなんも気づかんかった
浦原のボケとムカつく技術開発局のある十二番隊にずっとおるもんやと思とった
真子と会うたら蹴り食らわして、そうして死ぬまで毎日おるもんやと信じて疑わんかった
せやけどあのガキはちゃうんや
初めから藍染がなにをする気か知っとった
藍染ならずっと頭を抑えられとった真子を、いずれ手にかけることもわかっとったはずや
仮初めの、偽りの毎日の中でいつか藍染の寝首を掻くつもりでずうっとにやにやにやにやしとったんやろか
ぞっとするほど性悪やな
けどそない考えんと辻褄が合わへん
藍染の本当の強さを知っとった上で戦うたんやから
その執念を思たらやっぱりぞっとするわ
うちらより長いあいだ、藍染を狙っとったいうんか
チビのころからたった一人で？
そない思たらやっぱりもやもやすんねん
嫌な気分や
けったくそ悪いな
そして、真子はー
真子はあいつのこと聞いて傷ついとるはずや
うちにとってはあいつはただの敵やけど、真子にとっては元部下で、敵で
そして守ってやれへんかった部下やったって
ガキやったのにたった一人で百年以上も戦わせてしもた部下やったって気ぃ付いてしもたんやからな
やっぱりうちあいつのこと嫌いや
藍染よりよっぽど嫌いや
意味もなくへらへらにやにやしとるヤツはあかんねん
男やったらラブみたいにエロ本見てにやにやしとったらええんや
それにもうおらんヤツにどないして仕返ししたったらええかわからへんやん
せやから今度会うたら絶対にぶち殺したるわ
それにな、うちが複雑になるんは他にもまだ理由があるんや
うちにははっきりわかったことがある
うち自身のことや
あのとき、これまた銀髪のチビに会うた
チビのくせに生意気に隊主羽織なんぞ羽織っとった
血気盛んなガキや
あいつもあと百年も経てば狐目のガキみたいににょきにょき伸びるんやろう
けどうちは変わらへん
百年前も今も百年後もや
うちだけずっと変わらへん
元来、死神は霊圧ののびしろがなくなれば成長も自然と止まる
けどうちらはあの日から誰一人、変わらへん
死神のままやったらうちの背ぇもまだ伸びたやろう
けどもう伸びひんのや
うちだけ子どものまんまや
どうせ死神でもない虚でもないもんなんやから子どもの姿かてかまへん言うたらそうやけど
やっぱり背ぇくらい、誰かてほしいやろ？
まぁいまさら小娘みたいに傷ついたりせぇへんけどな、うちは
けどやっぱりなぁ、複雑やろ
参るわ
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