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□たつき
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いつのまにか一護の様子がおかしくなっていたことにはしばらくは気がつかなかった
でもそのうち織姫まで忙しそうにするようになって、変だなとは思った

気がついたときには
なぜか一護と織姫と朽木さんに茶度に石田っていう妙な組み合わせが仲良くなってた

そんで一護のヤツはまだしも
織姫が怪我をして学校に来て、理由も言わないなんてことが起きて
もう決定的だった

一護や織姫にはなにかとんでもないことが起こってる
朽木さんや茶度や石田も絡んでる

そしてそれは普通のことじゃない
真っ黒な着物を着てでっかい刀を担いだ一護が走っていくのを見たんだ
それも二階の窓からだ

どう考えても普通じゃなかった
だから逸る気持ちに反して聞くのがためらわれた
そのうち一護のヤツはますます学校を休みがちになった
そしてとうとう織姫がいなくなったんだ


一護は絶対になにか知ってた
知ってて隠してた
あたしじゃ力になれないってのか

力になれないことと話さないことはおなじじゃない
でも本当は一護はあたしを庇ってたんだ
危険から遠ざけようとなにも話さず、ひとりで勝手に離れていった
めちゃくちゃ腹が立った

そしていちばんむかついたのは
小さいころはあたしが守ってたはずの一護にいつのまにか守られてて、
そのことに気付かずにずっと一護に腹を立ててた自分にだった


思いがけず背中を押してくれたのは水色と啓吾だ

3人で一護のあとをつけて行った先の浦原商店って店で
一護の身に起こったことをはじめて聞いたんだった


なんていうか、あまりにも突飛な話でちょっと幽霊が見えるとかそんな話じゃなくて
空座町が消されるとか、一護がそれを守るとか
冗談にもならない話をいかにも胡散臭いおっさんに真面目な顔でされた

驚いたのは水色はまだしも啓吾がすんなり納得してたことで
姉貴はきっと大変な人に惚れちまったな
なんて決め顔をつくった
よくわからないけどなにか関係していたようだ

結局、いちばん疎かったのはあたしってわけだ


一護も水臭いヤツだ

あたしがなにも知らずにただ守られるだけなんて納得するはずがない
勝てる見込みの少ない戦いならあたしだって箒でもモップでも持って戦う

自分の命を人に任せてなにもしないなんてまっぴらだ

そう一護が帰ってきたら言ってやろうと思ってた



そしたらある日気が付いたら
町のいたるところでとんでもないことになってたんだ

町中の人があちこちで一斉に眠ってて
あたしだけ先にひょっこり目が覚めてしまったって感じだった

そして出会えたなかで目が覚めていたのは
やっぱり啓吾と水色で、そして千鶴だった

そうしてあたしたちは
わけのわからない化け物に追い回されて死にそうな羽目になる


結局、あたしたちを守ってあの化け物を倒し、空座町を救ったのは一護だったらしい
結局、一護に守られた

一護はあたしとおなじ年で町を守って世界を救ったらしい
そんな重責を一護に背負わせといて
訳知り顔で話す浦原っておっさんにはなんだか無性に腹が立った
だからきっちり睨みつけてやった
合気道の有段者が一般人に手は出せないからな

一護はしばらく寝込んで目覚めるころには死神の力を失っているそうだ

そうなれば一護はもう危ない目にあわなくて済むかと一瞬ホッとした
けど、あたしが明日いきなり合気道をなくしたら、と思ったら
なんにも言えなかった


だいたいこんなことを一護に背負い込ませるなんて
世の中どころか世界が間違ってる

それに一護は家族はなにも知らねぇなんて言ってたけど
遊子ちゃんも夏梨ちゃんもなんとなくわかってた

おじさんだって知らないはずがない
日頃は一護には放任っぽいことを言ってるけど
誰より一護を見てて心配してるのは黒崎のおじさんだ

こういうことは家族の外から見てる方がよくわかるんだ

みんなが一護を心配してる
一護が目が覚めたらお帰りって言いたいヤツばかりだ

だから一護、安心して目を覚ませよ
あたしには死神のことは全然わからないし、力にもなってやれないけど
こっちのことなら任せとけ

あっちでもこっちでも誰かを守る役だけなんて間違ってる
こっちじゃみんなが互いに守って守られて、なんだ

何度か眠ってる一護の顔を見に行ってるうちに
なぜだか小さいころの泣き虫な一護を守ってやらなきゃって思ってたときの気持ちが蘇ってきて
懐かしさと微笑ましさに胸がふるえた











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きっと作中でいちばんモヤモヤしてた人、たつきちゃん(笑)

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