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□浮竹
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藍染の企てを知るために大霊書回廊に通い詰めた
そこでわかったことは藍染が王鍵の作り方を知ろうとしていたことと
王族に関する情報を片っ端から得ようとしていたことの主にふたつだ

どちらの履歴も最近のものじゃない
特に王族に関する情報には百年以上前から当たっていた痕跡があった
たぶん彼が副隊長時代の早い時期に卍解を習得したころからだろう

彼の鏡花水月なら始解でもここに入り込むのは難しくなかっただろうが
場所が場所だけに万全を期したのだろう

彼は霊王が何者であるかを知って、霊王に代わり自らがソウルソサエティを治めることを望んだのだろうか


俺自身、霊王についてはその存在以外にはなにも知らなかった
総隊長から聞いたこともない
総隊長がなにもおっしゃらないということは
護廷十三隊の活動には関わりがないことということだ
それならこちらから聞くことでもない

まぁ内心では四十六室の在り様を見聞きしていれば
霊王について知ってもいいことはなにもないだろうとは思っていたのだが

それでも俺には尊敬する師がいて、心を許せる友がいて
俺を慕ってくれる部下と世界のために重要な仕事をする
そんな毎日が気に入っている

だから大逆どころかソウルソサエティに虚圏に現世、世界のすべてを手に入れようとする者がいて
百年以上に渡って陰謀を進めていたとはまるっきり思いもよらなかった

いやぁ、隊長失格だな、ほんと


だが、藍染の陰謀のために犠牲になった者はどれくらいいたんだろう

雛森くんは可哀想にまだ起きあがれずにいるらしい
幼なじみに刀を向けさせられた冬獅郎はそんな雛森くんを毎日見舞っている
市丸くんは藍染について行ったとみせて討とうとしたが逆に斬られてしまったらしい
松本くんがそこに居たそうだ
意外な話だが市丸くんと松本くんは幼なじみだったそうだ

そう言えば鏡花水月が効かない東仙くんが藍染についたことで
東仙くんと駒村くんが戦わなければならなかった
東仙くんの副隊長の檜佐木くんもだ
東仙くんは最後は藍染によって斬られたそうだが、虚の力を手に入れて帰刀した東仙くんと戦ったそうだ

どれも惨いことだ


やはり藍染はそうなるとわかっていて、敢えてそうしたのだろう

それから海燕も、だ
虚の犠牲になったとばかり思っていた海燕が虚圏で朽木と戦った
正確には海燕を取り込んだ虚が、破面によってさらに取り込まれて
海燕の姿と記憶と技をもった破面が朽木のまえに立ちふさがった

その虚は藍染の実験によって霊体と融合する能力を得て、海燕をのっとった
つまりは海燕も都も藍染によって命を奪われたのだ

そして何故あの虚はあの頃合で現れたのか
本当に偶然だったのだろうか
藍染はたくさんの種を撒いて使える芽が育つのを待っていたのか

だとしたらとても許せない

彼にとっては目的を果たす途中の余興のつもりだったのか
それとも大事に思い合う者たちの絆を引きちぎり、互いに斬りあい倒れる様が見たかったのか


どちらにしても仲間を大切に思っている者にできるやり方ではない
たとえ世界を手に入れようと思っても仲間を傷つけ合わせる必要はない
死神を凌駕する力を手にしていたのなら尚更だ

藍染は仲間を死神を憎んでいたのか
いや、死神ではなく互いに思い合う者たちを憎んでいたのか


だが何故だ
藍染は穏やかな人柄で誰からも受け入れられていたはずだった
それは雛森くんを見てもわかる

ならばおそらくは藍染が他者を受け入れなかったのだろう
だから惨い仕打ちも平気でできた


だめだ、私には到底、理解できそうにない
享楽にでも聞いてみるか
あいつならまた別の意見を持っているだろう


そこまで考えてふと気が付く
藍染にはこんなふうに頼れる相手がいなかったのだ
初めから今でも、ただの一人もだ

そう思えば彼の仕打ちの意図が分かったような気がする、
ーそう思ってはまずいだろうか













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はじめの構想とまるでちがう方向にかっ飛ばして行ってしまった、白い浮竹隊長(笑)

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