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□藍染
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神など虚像でしかない
人の理想と畏怖を映しただけのものだ

私は長く偽りに身を隠してきた
求められる死神を、求められる隊長を演じてきたにすぎない
私の真実を露わにしたことなど一度もない

ゆえに神が人に求められるままに姿を変える陽炎のようなものであることが
実によく見えていた


死神であることはたやすかった
死神の誰もが目指す隊長であることもまたたやすかった

他者は私とはあまりにもかけ離れた存在だった
そのことは物心がつく時分にはすでに気がついていた


私を慕ってくれたものは多くいた
穏やかに笑みを絶やさず優しくしさえすればいい
簡単なことだ

むしろ優しさを装う私に幻想を抱いては心を寄せる彼らの滑稽さに
呆れては感心したものだ

人はあのようにして神を求めるのだろう

人は信じるもののために命を賭す
ときには神に命を捧げる

ならば私を信じてやまない雛森君の命は私自らが絶っていってあげよう

それが神の慈悲だ


本当は他の死神たちとともにすべての世界を従えた私を
そのときに初めて晒す真実の私を目にしてほしいのだけれども


反対に少しだけ私に似たものを見つけたこともある

彼にもまた神は必要なかった
なにしろ彼の卍解は「神死槍」だ
気に入らない神など殺してやると言うのだから実におもしろい

彼は私への殺意をひた隠しにしていた
そこがまた気に入って手元に置いていた

だが私と似ていると感じたことが錯覚であるとわかるまでに時間はかからなかった

彼には大事なものがあるようだ
それさえあれば神も世界もあろうとなかろうと、どうでもよいのだろう
それが私との決定的な違いだった

彼もまた私が本来あるべき位置につくまえに殺すことになるだろう
退屈なことだ


もう一人、早々に相入れないとわかったが
私と似た目線で世界を見ていた男がいた

貪欲に力を求め、隊長位に安寧することをよしとせずに
私より先に崩玉にたどり着いた

実に賢い男だ
だがこの男は良くも悪くも死神だった

護挺という小さな組織の規則に準じて崩玉の可能性に蓋をした
崩玉の価値をもっともよく理解し
死神という矮小な世界の低俗さを認識していながらそのような判断をするとは理解に苦しむ
実に退屈なことだ


だがしばらくはこの退屈も凌げるだろう

ここ虚圏は実験の材料には事欠かない
少しは役に立つものもできるだろう

あと少しで長年待ち望んだ景色が見れるだろう
人々のいう喜びとはこのことだろうか

神となるまえに人としての喜びを知るのだから
なんともおもしろいことだ













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厨二病藍染様のティータイム。寂しさを高ビーに転換する娘みたいな(笑)

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