book

□勇音
1ページ/1ページ


卯の花隊長は藍染隊長の死体が偽物だといちばん早くに見抜き
藍染隊長がいるであろう清浄塔居林に駆けつけた

私はただそのあとを追っただけ

もしも卯の花隊長がいなかったら
私は四番隊でただ藍染隊長の死体を眺めていただけだったと思う

反旗を翻した藍染隊長たちとの決戦のとき
逆に虚圏に攻め込むという更木隊長と朽木隊長に卯の花隊長とともに同行したときも
私は卯の花隊長に従っただけだった


卯の花隊長にはわかっていたんだと思う

卯の花隊長が虚圏から帰ってきてからでもなんとか間に合うことが
ソウルソサエティーでの戦いに私の治療では及ばないことも

そして謀反人藍染が護挺の隊長たちの命を本気で取る気がないということも


卯の花隊長は洞察力があって頭の回転も速くて、そのうえ思慮深い方だ

戦いの結末は別としても戦いの大まかな流れは予測できていたんだと
今になれば思う

私はまるでダメ
あとになって初めて気づくことばかり

戦いが終わってみれば
一足先に黒崎さんと現世に戻った卯の花隊長がほとんどの処置を終えていた


四番隊は今回の戦闘を隊史上最大の戦闘と位置づけて
各班ごとに独自に行動できるようにし、
その指揮は主に伊江村三席に預けてあった

卯の花隊長と私はいわば遊撃部隊として虚圏を含めた随所に動けるようにするためだ

その結果、私は虚圏で朽木隊長や更木隊長以下数名を治療しただけで大戦を終えてしまっていた

もっとも四番隊だけは戦闘のあとも負傷者の収容や継続的な治療と多忙が続くので
こうして振り返ることができるのは時間がだいぶ過ぎてからだ


いま思えば死神代行の黒崎さんの力がいかに大きかったかが改めてわかる
彼は死神ではなく人間で、たかだか15、6歳だという

それなのに卍解を得たうえに、虚化というよくわからない力も得て
そのうえさらになんらかの力を携えて藍染を圧倒したそうだ

藍染は隊長のときでさえ、他の隊長たちを含む護挺の死神たちを鏡花水月の支配下に置いていた
それが崩玉の力を取り込んで、隊長たちは一閃のもとに斬り伏せられたという

その藍染を上回った黒崎さんとはいったい何者なんだろう


卯の花隊長は黒崎さんのことをどこまで知っていたんだろう

戦闘に加わった仮面の軍勢という人たちは卯の花隊長とは知り合いで
もとは護挺の隊長格だったが藍染の崩玉の実験で虚化させられ
ソウルソサエティーを追放されたのだそうだ

卯の花隊長は死神の虚化というものを知っていたんだろうか


いま藍染はソウルソサエティーの牢獄に囚われていて
破面の生き残りは虚圏へ戻り、ガルガンタは閉じられた

藍染のソウルソサエティー侵攻はくいとめられ
王鍵も空座町も護られた

もしも黒崎さんさえいなかったら
藍染は隊長たちにどんな風景を見せるつもりだったんだろう


私は卯の花隊長のあとをついていければそれでよかったけど
いままで当たり前だと思っていた世界は
当たり前じゃなかったのかもしれない

仮面の軍勢の人たちのようにある日突然、明日を奪われてしまうのかもしれない

藍染のような者は他にもいるのかもしれない


そこまで考えたら急に怖くなって
夜の静まり返った隊舎内に卯の花隊長の静かで暖かい霊圧を探して意識を集中した













.
一生懸命考えて眠れない仔勇音さん。ヒビリだからネガティブ(笑)

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ