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□白哉
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志波海燕という男は昔からよく笑い、誰とでも慣れあう
四大貴族の一に数えられる志波家の当主には
まことに相応しからぬ男であった

いや、実際に志波海燕がその座に座ることはなかった
志波家は海燕の父の代ですでに没落していた
その騒乱により父母を亡くし
幼い妹は一命を取り留めたが家門は廃れたのだ


志波海燕が護挺十三隊の副隊長に上り詰めたのは
ひとえにあの男の実力だった

志波海燕という男は四大貴族の次期当主であるときも
没落貴族の出の平隊士であるときも
十三番隊副隊長であるときも
なにも変わらぬ男であった


我が朽木家にルキアを養子に迎え、十三番隊に入隊させてからも
こちらがなにも言わずともルキアに目をかけ
朽木の家では与えてやれぬものを与えてくれていた


まことに昔と変わらぬ

四楓院夜一とともに朽木家の塀を乗り越え、私に仕掛けてきたときと
まったく変わらぬ顔でルキアに声をかける様が易々と目に浮かぶ

副隊長ともあろう者が礼節も弁えず平隊士に声をかけるなどとは

ルキアもそのような無礼を行うようにならねばよいがー

だが、あの男と話すルキアはよい顔をすると
いつか浮竹隊長が用向きのついでのように話していかれた




それがあの日、志波海燕とその奥方志波都が揃って命を落としたときから
ルキアは笑わなくなった

志波海燕によく似た笑みを私に二度ばかり見せたすぐあとのことだった


それから四十年
あの男の笑みも
ルキアの笑みも
私は一度も見ておらぬ


だが、初めて黒崎一護を見たとき
私は一瞬我が目を疑った

黒崎一護がルキアに向かって笑うのを見たとき
ルキアが護挺の死神の禁を犯し
死神の規範となるべき朽木家の家名を汚すとしても
それほどまでに黒崎一護に肩入れする理由が
わかったような気がした




緋真、ルキアは姉のそなたによく似た妹だ
姿形だけでなく心根までよく似ている

緋真、そなたにも志波海燕ともっとよく会わせてやるべきだったか

そなたならあの男を好いたであろう
そうすればそなたも朽木の家にあってももう少し笑ったであろうか

あるいはもう少し長くー




いや、過ぎたことだ

志波家は既になく、四楓院の当主は出奔し
精霊挺を支える四大貴族はいまや二家しか存在しない

護挺十三隊から三人の隊長を造反というかたちで欠いた今、
朽木家当主として今こそ私は精霊挺を支え
護挺の死神として精霊挺を護らねばならぬ

四大貴族の当主は並大抵の者では務めあげることはできぬのだ

かの者が果たさなかった
あの男が果たせなかったことを
私が果たそう

それが私に唯一できる
唯一私にだけできることだ











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百哉は愛されっ仔なんじゃないかな。しかしツンデレるツンデレる(笑)

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