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□真子
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オレは結局掴めへんかったんや
藍染の尻尾を


三番隊隊長やったとき藍染を副隊長に指名したんは
近くでよう監視するためや

あれはどうにもいけ好かん腹の黒い匂いがしとった


せやけどそう簡単に尻尾を見せるタマでもない
じっくり見とけばそのうちボロがでるやろ程度に思とった

実際、藍染は副隊長としてはようできた奴やった

書類仕事はできるしマメやし
オレから見たら胡散臭いことこのうえない笑顔で隊士からの評判もよかった
実戦の実力は隠すほどある

言うことなしや


だから余計に油断したらあかんと
オレの頭のなかで勘いうやつが囁いた


オレの逆撫では知覚を逆さまに操る能力や
藍染の鏡花水月も乱反射を使こうて知覚を狂わせる能力や

こないな能力をもっとって穏やかで誠実な性格だけであるはずがない


似た能力を持つオレやから働く勘やった



ある年、霊術院を一年で卒業したとかいう鳴り物入りの天才を
どうやってか藍染が引き抜いてきた

天才いうてもまだ小さなガキやった
せやけどそいつは数年で三席まで登ってきよった


ヘラヘラして屁理屈こねくりまわす小生意気なガキやのに
上っ面のよさがどことなく藍染に似とる気がして
類は友を呼ぶいうんは本当やなと思とった


せやけど、藍染を監視しとったはずのオレは
小さなガキの腹さえ読めてへんかったんや

あの晩、
藍染にはめられて虚化した忌々しい夜、
藍染の隣にニヤついたガキが立っとったことは驚くことやない


それよりも驚いたんはソウルソサエティーに移された空座町で
市丸が藍染を裏切って斬られたと聞いたことや


あの晩からずっと、藍染を殺すんはオレやと自分に誓うてきた

せやけど市丸はいつからそのつもりやったんや?

まさか初めからなんてことはないやろな…


あかん、オレは隊長やったんや
あいつらのいちばん近くにおった

それやのにー





ひよりはたまに昔のことを楽しげに語ることがある
あいつは生意気でもまだチビやったから
曳舟隊長や十二番隊のことを家族やと思うてたんやろう


オレは逆や

仮面の軍勢として現世に隠れて爪を研いどったいまの方が
ほんまに仲間やいう気がしとった


藍染が獄に繋がれて
一護が死神の力を失ったいま、
この先のオレたちは
オレは
なにをしたらええのか正直言うてようわからんへんねん


藍染を殺すこと以外に望みなんてあらへんかった

せやけど藍染はもう死ぬこともでけへんのやて


藍染が死んでも生きとっても
オレらが死神でも虚でもないのは変わらへん

藍染といっしょにぶち殺したろ思てた市丸のことはなにもわからんままや

もちろんひよりを斬ったことは許さんけどな



藍染が一護を生まれたときから狙っとった言うたらしいな

一護はへんな奴や
そういや、あいつの周りだけ
なんやまだようスッキリしとらんな

藍染が絡んでろくなことになった試しなんぞない


手始めに一護を張っとくんもええかもしれんな

藍染を倒すんにいちばん働いたんは一護や
借りっぱなしは癪やしな

そんで藍染のことも一護のことも、市丸のことも
もっとよう調べてみるか

まえより護挺のやつらにも頼みやすくなったはずやしな

どうやろか?

今晩いっちょみんなに聞いてみるか
せやな、そうしてみるか












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上司運がないのは十二番隊だけど、部下運がないのはダントツこの人!! でもめげないでほしい(笑)

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