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□空鶴
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岩鷺のバカが夜一の手引きした連中と出て行った
出て行ったというか
おれが精霊挺に打ち込んでやったんだがな

死神の格好をした人間とその仲間の
どいつもこいつも風変わりでおかしな連中だ

やつらは豪気なことに
精霊挺に侵入したうえに罪人をかっ浚い、
立ちふさがる奴は全員殴り倒す気でいるらしい

どんだけ禁を破りたいのか知らないが
精霊挺の連中に吠え面をかかせられるなら愉快な話だ

まぁ夜一がいっしょなら岩鷺も死にはしないだろう



おれたちは流魂街に暮らしているが生まれは精霊挺だ

今じゃおれと岩鷺と金彦と銀彦だけだが
生まれた家は名のある貴族で、使用人がたくさんいるでっかい屋敷だ

そのころには兄貴も両親もいた


おれの兄貴は死神だった
40年ほど前に死んだ

右腕を失い、死神になる道を閉ざされたおれが花火師になるというと
兄貴は嬉しそうに笑ってそれを許した

いい兄貴だったよ



岩鷺はまだ小さかったから生まれた家のことはほとんど覚えていないだろう
兄貴がどうやって死んだかも知らねぇ


ソウルソサエティー随一の花火師の弟として流魂街で暮らしていくには
別段、知らなくとも困りゃしねぇ


だが、行った先で知るだろう
ついていったやつらが助けようとしてるのが
いったい誰なのかをー


岩鷺も男だ
もう自分で乗り越えられるだろう


あいつがついていくと言い出したときは
正直ちょっとだけ驚いたよ

ごろつきみてぇなやつらとばかりつるんでると思いきや
ほんの少し兄貴に似た目をしやがった
ほんの少しだけな


それにおれから聞かせるんじゃ意味がねぇ


夜一の頼みはオレにとっても渡りに船だったってことだ



それにこれから起こることはたぶんおれたちにとっても生きるか死ぬかの出来事だ

それなら岩鷺の面倒みてる場合じゃねぇ

天才花火師志波空鶴様は花火の技だけじゃねぇ
喧嘩させてもとことん強えぇってこと、見せてやるよ


金彦、銀彦用意はいいか?

そろそろ、いっちょう加勢に行くぜ












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空鶴さんは元大貴族の現当主で家長で大黒柱なんだな〜。苦労人の家族思いだといい(笑)

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