short

□猫ごっこ
1ページ/3ページ


【猫ごっこ】
とある夜の私と彼のお話




「雪ちゃん、雪ちゃん」

「どうしたの…って!」

予想通り驚いてくれた雪ちゃん。
ずり落ちた眼鏡をくい、と中指で押し上げながら目をパチパチしてる。


「ナニそれ…」

指差された先には、つんと尖った白くてフワフワの耳。くるりと後ろを向いてみると、またもや雪ちゃんから小さな驚声が。そこには当然のように白くて長い、尻尾が生えていた。所謂ネコ耳、ネコ尻尾というものを、意図的に付けている状態。


「可愛い?」

尾を自ら振って見せながら問えば、雪ちゃんからは苦笑い混じりの返事が返ってきた。


「可愛い…うん、可愛い。でも…それどこで手に入れたの?」

「シュラ先生が、雪ちゃんと二人きりの時使ってみるといいよーって…」


一瞬、雪ちゃんの表情が固まった。そして眉をピクピクさせて「あのヤロウ」と小声で呟いた…ような気がした。


「怒った?」

「そんなことないよ。…おいで」


手招きされる方にとことこと歩いていくと、雪ちゃんの手が私のネコ耳を撫でた。間接的に感じる、優しいなでなでに思わず笑みが零れる。

細い腰に腕を回してギュッと抱き着けば、そっと抱き返してくれた。ちゅと、おでこに口付けて微笑む雪ちゃんに胸がきゅんとする。


「私、雪ちゃんだーいすき」

「本当?僕も雛大好きだよ」

「やったー!じゃあ…もっと可愛がって」


私は目を閉じてキスをねだった。

顔に影が落ちふわりと唇が重なる。雪ちゃんのキスは優しいから大好きだ、気持ちがいっぱい伝わる。


長い口付けから目を開くと、妖しく笑う雪ちゃんの姿。


「あ…」

「もう途中でやめられないからね?」


身体を抱き上げられそっとベッドに寝かされた。




_
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ