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□小悪魔ですね
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なんて勝手な男なんだと、怒る暇さえ与えてくれなかった志摩君に怒りを通り越して呆れた。

自分から誘ったくせに。

その気にさせたくせに。

まるで私が言い寄ってフラれたような苦い感情が、心を支配する。

サイテー。サイテー、サイテー。


「ちゅー…して欲しかったのに」



後ろから肩を掴まれた。

人がこんな気分の時に誰だ空気の読めない奴は。


振り向いたと同時に、唇に感触。


離れていく唇に視線を向けて、見上げると知ったピンク色の頭。


「志摩…くん?」

「我慢出来んくて戻ってきてしもたわ」

ニッコリと笑うと志摩君は私を抱きしめた。


「勝手にするとか…サイテー」

私も腰に腕を回す。口にした言葉は大嘘。


ぎゅっとぎゅっと抱きしめ返した。


「ハハハ…雛ちゃんして欲しい言うたやん」

志摩君は赤くなった私の耳元で意地悪く囁く。

「嘘だもん…」

「嘘なん?」

「嘘…」

視線がぶつかり、再び唇を重ねた。深い口付けに頭がぼうっとする。









「あーあ、塾遅刻やわ」

「私もドラマ終わっちゃったよ」


「ま、いいやんね」と軽く笑った志摩君は私の手を握りしめ、



「今晩部屋行っていい?」


って呟いた。





【小悪魔ですね】

恋愛ドラマよりドラマチックに誘惑された。







END 2011.6.9
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