短編読み物置き場
□ふわふわ
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お風呂からあがった光稀は、困っていた。
脱衣場の籠に入れておいたはずの服がなく、替りにもこもこと、白い服が置いてあったからだ。
「祐輔さんの仕業だな……」
その通りだった。
光稀が入浴している最中に、祐輔は、こっそりと服を入れ替えていたのだ。
「これ、着なきゃダメかな?」
ぼそりと呟き、光稀はもこもことした服を手に取った。
それは明らかに男が着るようなものではなく、何故かズボンに、しっぽらしきものがついているものだった。
タオルを巻いて出ていけばいいとは思う光稀だったが、このふわふわとした服を、祐輔が楽しそうに、用意をしたのではないかと思い、悩んでしまう。
惚れた弱みというものなのだろうか。
光稀は用意してある服を着ると、大きくため息をついた。
光稀の頭の中を、脱ぐ、脱がない、と言う言葉が、おい駆けっこをはじめる。
鏡に映る自分は、なんとも恥ずかしい状態になっている。
「光稀」
ドアの向こうから、声をかけられて、光稀は自分が恥ずかしい格好をして居ることに、独りで赤面した。
なかなか出てこない光稀に痺れを切らした祐輔がドアを開けようとノブに手をかけた。
ノブが動いた事に気付き光稀は急いでノブを掴んだ。
「ま、まってよ!!、祐輔さん、俺の服、やっぱり返して」
ダメ元で、祐輔にお願いしてみる。
「嫌だね、ちゃんと着て寝室までおいで」
ドアごしの祐輔の声に、光稀は心臓が高鳴るのを感じた。