短編読み物置き場
□★祈り 願い (完結)
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12月31日大晦日。
神の奉られている境内にある本堂。
明日に備えた準備は整っている。
「わが主、神よ、またこの季節がやって参りました」
神聖な空気が流れる祭壇の前、神の守り人神主、永臣(ヒロオミ)が、祭壇を愛おしそうにみつめる。
「明日は、神のため、自らの願いの為、沢山の民が祈りを捧げに参ります。」
風の音さえも聞こえない、無音の世界にいる感覚に捕われる。
「わたくしも、この時を一年間、お待ちしておりました」
ふぁっと、温かな風が永臣を包み込む。
薄暗かった室内が、眩しく暖かい光で一杯になる。
その光が段々と薄れていくと、その中央に長い銀髪の男、神が座っていた。
永臣は、深々と頭をさげる。
「ひさしいのぉ〜永臣、おぬしの顔をよく見せろ」
永臣が顔をあげると、神は、嬉しそうに微笑む。
「我もこの時を待っていた」
神は立ち上がると永臣の側に近づいてくる。
「ありがたきお言葉」
永臣は再び深くお辞儀をする。
そんな永臣の顎を掴むと神は、永臣の顔を上げさせた。
「もう良い…そろそろ時間ではないのか?」
ニヤリと笑うと、神は永臣の唇をペロリと舐める。