短編読み物置き場
□★祝200、300、400,ヒット記念ミニ小説
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「あ!待って!」
ふと、上の方から声がして、公園のベンチで、仕事をさぼっていた俺、恵司(けいじ)は、上を見上げた。
空から何かが、降ってくる。
ヒラヒラと舞って落ちてくるそれが、何であるのかわかったのは、俺の目の前にそれが来た瞬間だった。
ぱ、パンツ?
しかも男もの??
「フガッ…」
ヒラヒラと舞っていたものは、そのまま俺の顔の上に舞い降りた。
石鹸の香が鼻につく。
あ、良い匂い……ッてそんな事考えている場合じゃない。
俺は慌てて顔の上に落ちてきたパンツを手に取った。
「あの〜」
手に取ったパンツを見ていると、声が聞こえ、俺は顔をあげた。
「それ俺のなんです」
俺の手にあるパンツを指差しながら、エプロン姿の男が、こちらを見ていた。
「へ?あ、はい」
俺は手に持っていたパンツを手渡した。
「ありがとうございます」
男なのに、妙にエプロン姿が似合っていて、ドキドキしてしまう。
「あの、どうかされました?」
じっと見つめてしまっていたらしい。
何を考えてるんだろう俺は、相手は男だって言うのに。
「いや、その、」
俺はシドロモドロになってしまう。
そんな俺を見て、男は、クスッと笑った。
うわッ、めちゃくちゃキレイ。
「あ、すみません笑っちゃって、想像通り、やさしそうな人だなって思ったらつい……俺、いつも見てたんです、あなたの
事」
クスクスと笑う男の顔が、俺の鼓動を早くする。
「俺を見てた?」
「はい、朝の通勤の時とか、今日はたまたま貴方を見つけて……よそ見してたら、これ、落としちゃったんです」
自分の手に持つパンツを恥ずかしそうに、少し持ち上げた。
ドクン――
一際俺の心臓が高鳴った。
「なんで?」
俺は、その男から、眼を離したくなくて、じっと男を見つめた。
サラサラの髪、優しそうな瞳、スッと通った鼻、薄い唇、白い肌。
「すみません、男に見られてるなんて、気持ちわるいですよね」
男は淋しそうに俯いた。
やばい、触りたい。
手を伸ばせば届くだろうか?
俺は無意識に、男の頬に触れていた。
「あ、あの?」
男の声に俺は、はッとさせられ、男の頬に触れていた手を引っ込めた。
「わるい」
俺は何をしていたのだろう。
相手は男なのに、あの衝動は危険すぎる。
「いえ、こちらこそ、すみません、じゃあ、俺、戻りますね」
行ってしまう。
そう思った瞬間、俺は男の手を掴んでいた。
行ってほしくない。
「あの、家に来ますか?」
恥ずかしそうに俺を見てそう言う男に、俺は興奮を覚えた。