Starry☆Sky

ヤツの襲来
1ページ/1ページ












天才とは、どうすればなれるんだろう。


普段私はよく先生たちからサボりすぎだと言われる。
同じクラスの友達からは、いつもサボってるのに星詠み科首席などおかしいと言われる。
いやいや、私にとっては何一つおかしい事などないのです、うん。
確かにサボっている事は認めよう。
…少々単位が少ないことも認める。
でも、人間サボってばかりで何もせずに首席をとるなど絶対に無理なお話!


…何が言いたいかと言うと、現在私は猛勉強しているというわけです。
早い話が、今日は休日で実は私はいつもサボっているとみせかけて休日は結構勉強をしているんだ!……という事を理解して頂きたいという事。


少しかっこつけすぎた。
でも、その方がなによりかっこいいと思ってしまう。
いつもサボっているのに実は首席なんて、漫画の中のヒーローみたい!
だから私はこれからもこの首席の座は誰にも渡す気はない。
このかっこよさを貫くためならどんな努力だってするつもりです。


テスト前は徹夜なんてあたり前!
誰にも気づかれない様に頑張って、皆を驚かせてやるさ。





「……なんか虚しくなってきた」





一人、部屋で自分を励ましながら勉強しているものの、さすがに限界だ。
おかしい、いつもならこの思いを励みに頑張れるのに。


すると、隣の月子ちゃんの部屋からガタンと大きな音が聞こえた。
そしてそれから少し遅れて、きゃっ、という可愛らしい悲鳴が聞こえてくる。


…て、ん?悲鳴?
ま、まさか誰かが部屋に侵入でもしたとか!?
これは今すぐ助けに行かないと…!


私は急いで椅子から立ち上がり、自分の部屋の扉を開けようとした。
すると、調度外からも私の部屋の扉が勢いよく開かれた。
因みに学生が住む寮なので、もしもの時のために鍵は基本的には開いている。





「あ、月子ちゃん!今行こうとしてたの!どうしたの!?」





扉を勢いよく開け、そしてその向こうにいたのは今にも泣き出しそうな顔をした月子ちゃんだった。





「ゆきほ…先輩……」


「やっぱり誰か侵入でもしてきた!?よし、ここは私が…、」


「違うんです先輩…、その…、ご、ゴキブリが出たんです!」


「ご、ゴキブリぃぃいい!?」


「すみません!私怖くて…急にゆきほ先輩の部屋に入っちゃって…」


「ううん…それは全然構わないんだけど…」





困ったな…、どうやってやっつけよう。
ゴキブリなんて大の苦手だし…。
そもそも虫自体凄く苦手。


いやいや、ここは可愛い後輩の月子ちゃんが困ってるんだ!
私がなんとかしなければ。





「…よし…、私がやっつけるよ!」


「先輩ゴキブリ大丈夫なんですか?」


「大丈夫!…ではないけど、任せなさーい!」


「ゆきほ先輩…」





私と月子ちゃんは、月子ちゃんの部屋に向かう。


そしてヤツはいた…。
モゾモゾと素早く動くヤツを見て、私は思わず悲鳴をあげそうになったが隣で瞳をウルウルさせながらヤツを見ている月子ちゃんを見て、私は月子ちゃんを自分の背中に周してヤツに向き合った。


ヤツの名前はゴキブリのゴッキー。
私のネーミングセンスは今は無視無視!





「ゴッキー…!…か弱い乙女の部屋に表れおって〜、ちょっと苦しいかもしれないけど、我慢して死んでください!」





私の放った殺虫剤ビームは確かにゴッキーに命中した……が、ゴッキーは中々しぶとかった。
そしてあろう事か、私と月子ちゃんめがけて羽を広げて飛んできた。





「きゃあっ!」


「いや〜!飛んだ!ゴッキーが逆襲してきた〜!」





私は月子ちゃんと一緒に逃げ回りながら、必死に殺虫剤を振り回した。
気がつげば二人とも半泣きになりながら、キャアキャアと色んな物を散らかしつつ部屋を逃げ回ってしまっていた。





「おい…何の騒ぎだ……ってどうした二人そろって…」





騒ぎを聞きつけたらしい星月先生が月子ちゃんの部屋に駆けつけてくれたらしい。





「ほ、星月先生…。ゴッキーが!ゴッキーが!」


「ゴッキー?」


「私の部屋にゴキブリが出てしまって…それでゆきほ先輩に助けてもらってたんですけど手強くて……」


「まったく…しょうがない。夜久、この新聞使っていいか?」


「え…あ、はい!」





星月先生は月子ちゃんの部屋に入っていくと、ものの数十秒でスパンという音を響かせた。





「ほら、もう大丈夫だぞ」


「あ、ありがとうございました!」


「良かったね、月子ちゃん!」


「本当に迷惑をかけちゃってすみませんでした!」


「全然。それじゃあ、また明日ね」





月子ちゃんは笑顔で部屋に戻っていった。
良かった良かった。





「星月先生、ありがとうございました」


「気にするな。ゆきほもよく頑張ったな」





星月先生が私の頭を優しく撫でてくれる。
やっぱり頼りになる。





「ゆきほはもっと人に頼れ。今回だって俺やほかの先生に言えばいいんだ」


「かっこいい所見せたくて…」


「まったく…、ああ、それと勉強も程々にな」


「え…、何でわかったんですか!?」


「俺は保健医だぞ。目の下に薄くだが隈ができてる」


「…誰にも言わないでくださいよ?」


「…ああ。ゆきほが今日はもう休むなら秘密にしておくよ」


「…ふふ…星月先生には敵いませんね」





私が苦笑すると、星月先生は優しく笑ってまた私の頭を撫でた。










ヤツの襲来










(ゆきほは虫が苦手か?)
(……はい。ゴキブリだけじゃありません虫全てが大の苦手です)

 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ