おはなし

□涙さえ拭えない
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朝、俺は10代目のベッドに腰掛けて10代目を起こす。優しく、触れるか触れないかぐらいの口付けをして、優しく囁く。これで起きた試しは残念ながら一度も無い。しばらくすると10代目は俺が何もしなくても目を覚ます。おはようございますと微笑んでも、貴方は無視して部屋を出る。まるで俺なんか此処に存在していないかのように…。しばらく俺が10代目の部屋で佇んでいると、10代目が部屋に帰ってきた。10代目!…って俺が駆け寄っても、やはり無視して部屋を出る。ああ、俺は嫌われたのかな。めげずに10代目の後を追う。10代目は俺を無視して歩き続ける。それでも俺は後をついて行く。黙ってついて行く。それが右腕。途中で10代目は山本とハルと合流した。10代目は二人に囲まれた。ハルは10代目の腕に馴れ馴れしく絡み付き、山本は時折10代目の頭を撫でる。離れやがれ、そう言って阻止しようと手を伸ばすのに何故か近付けない。ただ目に焼き付いたのは、二人に囲まれた10代目が涙を零していたこと、何とも切ない顔をして。そしていつも明るくうるさい二人が静かに口を瞑る姿。俺は立ち止まり、遠ざかっていく3人を見つめていた。
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