ショート
□仁王くんの1日
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仁王が俺との約束をドタキャンしたのはついさっきのことだ。せっかく花見をしようと思ってたのに、仁王のせいで今日の予定はがら空きになってしまった。
(ったく、せっかくこんな可愛い彼女?が誘ってやったのに…)
仕方なくコンビニでも行こうととぼとぼ歩いていたら、見慣れた銀髪しっぽ付きが歩いて来るのが見えた
「仁王……?」
目を凝らすとやはり仁王だ。
(何だあの頭の上のやつ)
それはベレー帽だった。しかもセーターには彼のイニシャルであろう「N」のワッペンが付いており、どこか古めかしい。
ブン太は急いで隠れた。
「何だあいつ……」
今すぐにでも殴ってやりたい気分だったが、好奇心の方が勝ってしまったため後をつけることにした。
仁王は道と呼べないような道を通る。その後を必死で追うブン太。
気が付けばこじんまりとした駄菓子屋に着いていた。
(おっ!?あれ旨そう……)
ブン太にとっては天国だった。が、仁王がいることを思い出し茂みからそっと見ることにした。
するとシャボン液を大量に買い始め、思いやりかわからないが1つだけ残した。あとは駄菓子を適当に選び、おばあちゃんに差し出している。
おばあちゃんはシャボン液の多さに驚いていたが、何も言わなかった。
仁王が駄菓子屋から出てきた
(これからどうするんだろぃ)
仁王は携帯電話を取り出した。
(まさか浮気……)
悪い考えが頭をよぎる。
自分の携帯の着メロが流れたのはその直後だった。
あっ、と思うとすぐ近くまで来ていた仁王と目が合った
(バレたっ……!?)
しかし電話からは仁王の声
『おー、ブンちゃん。今空いとる?』
「おめーのせいで超ヒマ」
『じゃ、花見するぜょ』
間髪入れずに「ばーか!!菓子全部よこせよなっ」と言って電話を切った。その後すぐに仁王のもとへ駆けていき、一瞬のキスをした。
念願の花見。あいつがシャボン玉を膨らましてる間、俺は桜に見向きもせず駄菓子をやけ食い。仁王の頬っぺたに桜が貼り付いてたから、一瞬でそれを食べてやった
仁王くんの1日
(ブンちゃんが頬っぺたの桜を食っても、俺のほっぺの桜色はとれないぜょ)