ショート

□回れ右で君にキス
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今日はバレンタインデーである

恋する女子が好きな男子に思いを伝える日であり、チョコレートの甘ったるい香りで死にそうになる日でもある

俺と恋仲にある赤也も例外ではなく、チョコレートを貰っている

「いくつ貰ったんだ」

と聞くと、まあまあ貰いましたよ!!と返ってくる声

人の気持ちも知らないで、女子から貰ったチョコレートをムシャムシャと食っている


「柳さん……??」

「何だ」

「なんで泣いてるんすか?」

え?

泣いてなどない、と言いながら目元を触ると確かに液体の感覚がある

「もしかして……嫉妬…?」

「そんな幼稚なことではっ……!!」

幼稚なことであった


赤也に背を向けて「お前が悪い」と言った

赤也は赤也でおろおろしている

その後、チョコレートをすべて丸井のロッカーにぶちこみ「先輩っ……!!ごめんなさいっ」と謝ってきた


相変わらず単純である


背を向けたまま「こっちへ来い」と呼べば、忠犬のように近寄ってきた


首を右後ろへと回せば計画通りに君の顔


その後は君に溺れよう






(チョコレートの味がした)





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