INTRO.T

□LAST PLAY,and HELLO.
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LAST PLAY,and HELLO.





まだ五分咲きが主の白い薔薇の庭園で

幼い少年は 見知らぬ青年と
短く 永い 会話をした




『やあ、こんにちは』


開花まであと残り僅かの未熟な蕾を、事も無げにその細くも長い指先で手折った青年の第一声は、このように他愛もないものだった。


真昼の太陽を背にした青年の全身は仄暗い陰となり、その容貌の詳細たるはどれほど目をこらしても…何故か把握できない。

少年が唯一認識する事が出来たのは、

無意味なのかそれとも予め意味を為すものなのか、自分から適度な距離___会話を成せる程度の___を保って佇む青年の背がとても高いこと、

それに手折られたまだ青い蕾が青年の足下に堕ちて転がった、という現象のみだった。


「…こんにちは」


青年の意図が掴めないまま、それでも少年はいわゆる好奇心に殉じて、この、まるで真昼の蜃気楼のごとく現れた青年との「会話」を始める事にした。


『好奇心も人一倍か…。それもいいね』


独り言。
そのままに呟くと、また、青年は蕾をひとつ、気まぐれのように堕とした。


少年は大きな眼を更に見開いて、青年の次の言葉、次の行動を待つ。



ふふっと青年が微笑った。



勿論、表情は視てとれないので、低く、静かな声音だけを少年は認識する。


「…何か、可笑しい事でもありましたか」


私? それとも、貴方?


解らない。
予想できないからこそ、少年は想像出来る範囲で様々な「予測」に備え始める。







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