SECRET LADY
□a.m.DOLL
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a.m.DOLL
午前 二時。
『完璧な』老紳士に『そつのない』ボディチェックを受け、網膜認証を済ませれば、無機質なドアがスライドする。
適温に保たれた、広くも狭くもない。
けれど、中央にそれだけ置かれたベッドは飾り気こそなかれ、豪奢なクイーンサイズ。
上質な 柔らかそうなシーツの上で。
膝を抱え、痩せた躯を丸めて虚ろ気に座り込む、黒髪の青年。
幾夜かも曖昧な、私の上客だ。
幾夜も 幾夜も
闇色の瞳は、私自身を眺めるばかり。
低く零れ落ちた吐息以外、言葉を交わした事もない。
この男は、何故、私を呼び続けるのだろう。
何もかも 秘密。
そんな青年の呼称は
紳士を通じて『竜崎』だと知った。
時刻は、いつも通り、真夜中から夜明けにかけて。
私は彼の
望む通りの『人形』となる。
それは 眩暈のするような
甘さと 快楽の ひととき。
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