INTRO.T
□月に叢雲
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欲しい。
あの、全てが。
初めて「其れ」を視たとき、光の射さない闇の色を知った。
初めて「其れ」を聴いた時、動かしようのないモノが此の世界に在るのだと気づいた。
西陽が沈むと、日の残像は全て消え失せ、まるで違った表情を持つ「夜」という暗さが何もかもを覆い尽くす。
暗いだけで「闇」じゃない。
見慣れた白くも美しい発光体が静かに
それでも強かに此処を照らすから。
闇なんかじゃない、
腐った世界。
腐食するモノならもとより消せばいい。
動くモノなら使ってから棄てればいい。
要らないモノなんて溢れてるだろう。
暗い世界を優しく照らす、唯一の美徳を誰もが求めてるだろう。
潮の満ち引きがなければ、何も生まれないんだよ。
人類進化できないんだよ。
お前だって 知ってるくせに。
なのに。
暗よりも「闇」。
強かよりも、あざとく。
穢れ尽くしたのか?
それとも、
闇故に視えないのか?
いや、視てないフリ。
気付けよ。
知ってるくせに。
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