戦国・三国小咄

三成、清正、正則は無双
吉継、行長はオリジナル
タイトルに●がついてるのは4設定

大河に感化されて黒田家増殖中

三国は司馬一族と7加入メンバー中心

基本、史実無視
一応気にしてはいますが
本気にはしないように


◆半兵衛と黒田三人衆 

○半兵衛は無双
○三人衆はオリジナル
○ストーリーは大河から拝借





「遅い!」

母里太兵衛は声を荒げた。
栗山善助はそんな義弟をちらりと見やり、ため息を落とす。
井上九郎右衛門は、姿が見えぬ。

彼らは今、有岡城へ向かう主を警護するという役目を負っている。
にもかかわらず、主直々に用を言いつけられ、寄り道を余儀なくされているのだ。

が、その用事の相手が姿を見せぬまま、はや一刻が過ぎていた。

「もう待てん! 兄者、俺は殿を追う!」
「ばかたれ、殿のご下命ぞ」
「じゃあ九郎はどうした!」
「知るか。しばらく大人しくしてろ」

「ごめんごめん、お待たせー」

言い合う二人の剣呑な雰囲気を、のんびりした声が破った。

「竹中様!」

善助が駆け寄る。
太兵衛はその場で一礼した。

「あれ、九郎右衛門殿は?」
「そんなことより竹中様、ご用とは」
「そんなことって、善助殿、意外と言うね」
「殿をお待たせしておりますれば、早急にお願いいたします」
「はいはい。ほんと、官兵衛殿愛されてるー」

半兵衛がからかうように笑う。
その時、砂塵を上げて一人の男が駆け込んできた。
九郎右衛門である。

「竹中様、殿はいずこに!」

九郎右衛門は叫びながら半兵衛に詰め寄った。
半兵衛はやれやれと肩を竦める。
事態の飲み込めぬ二人は、何事かと立ち尽くすばかり。

「殿がお一人で発たれるのを見た者がいる! 竹中様、何かご存知なのでしょう!」
「なに、まことか九郎!」
「竹中様!」

善助と太兵衛も声を上げる。
半兵衛は、微かに口角を持ち上げて笑った。

「ごめんね、謀らせてもらったよ」
「!!」
「官兵衛殿に頼まれたんだ、君たちを足止めしてって。官兵衛殿が俺に頼みごとなんてめったにないから、つい引き受けちゃった」
「殿はいずこに!」
「分かってるんでしょ、善助殿」

今にも半兵衛に掴みかかろうとしていた善助が動きを止める。
太兵衛、九郎右衛門も、青ざめて立ち尽くしていた。




2014/06/15(Sun) 22:47 

◆半兵衛と黒田三人衆2 

「……お一人で……有岡に……?」
「今、有岡は殺気立ってる。そんなところに一人で行こうが四人で行こうが、結果は同じ。官兵衛殿から伝言だよ。姫路に帰り、万事父上に従え、ってさ」

用はそれだけ。
そう言葉を続けようとした半兵衛だったが、俯いて肩を震わせる善助の姿を見て口を閉ざした。
主に謀られ、置いてきぼりを食らったのだ。憤るのも無理もない。
さあどうやって宥めようか。そう、思案を始めようとした矢先。

「……あんの自己中殿、マジふざけんな」

「……へ?」

「……帰ってきたらぶっ潰す」

「へ!?」

ふるふると怒りに震えながら吐き出された、なんとも物騒極まりない言葉。
聞き違いかと太兵衛、九郎右衛門を窺った半兵衛は、あちゃー、とでも言いたげな表情を浮かべる二人を見て聞き違いなどではないことを悟った。

「お、おーい、善助殿……?」

二人は善助を止める気などないらしい。
そろって明後日の方向を向いている。
仕方なく半兵衛が恐る恐る声をかけてみると、ぱっと善助が顔を上げた。

それはそれは、素晴らしい笑顔で。

「申し訳ございません、竹中様。ついうっかり取り乱してしまいました。それと、うちの殿がご迷惑をおかけしました。帰ったらきつく言い聞かせておきますゆえ、なにとぞご容赦を」
「あ、いや……うん」
「竹中様、我ら急ぎますゆえ、これにて!」
「え、ちょ、はぁ!?」
「太兵衛、九郎! 急ぎ姫路に戻るぞ!」

混乱する半兵衛を置いて颯爽と去っていく善助。
一礼した九郎右衛門が後に続く。

「……俺、善助殿が一番常識人なのかと思ってた」
「なんとなく引っかかる言い様ですが、兄者の殿への盲信っぷりはちょっと引くくらいですから」
「……いや、そういう問題じゃないと思うんだけど」
「俺も姫路に戻ります。御免!」

義兄と戦友のあとを追って走り出す太兵衛。
その背中を見送った半兵衛は、珍しくしばらくぽかんとしていたのだった。



***

オリジナル善助は、腹黒優男に即決しました。←
九郎右衛門はぼーっとした無口なひょろなが君、太兵衛はやんちゃ坊主がそのまま大人になったような、一見粗忽だけど実は三人衆の良心。

てことで、大河に感化された結果の産物でした。

2014/06/15(Sun) 22:46 

◆官兵衛と子飼いたち 

○官兵衛は子飼いをどう思っているんだろう
○ナチュラルにオリジナル善助が出てきますよ
○むしろ主眼は官兵衛と善助





官兵衛は目の前で議論を交わす三人──正確には、議論を交わす二人と理解せぬまま茶々を入れる一人を眺めていた。

秀吉の朝鮮出兵のころから、三人の関係は揺らぎはじめている。
いや、もっと前から、もしかしたら出会ったときからずっと、彼らは噛み合っていなかったのかもしれない。

が、官兵衛にとって、彼らの関係性など興味のないことだった。

「卿らは──」

たまりかねて、口を挟む。
真っ先に反応したのは、三成だ。
三成は他の二人よりも早くから官兵衛を見ており、秀吉の寵愛ぶりも知っている。だから、何かと官兵衛に反目するのだ。

「……ご意見、お聞かせ願いたいものですな。軍師官兵衛殿」

あからさまな挑発に、官兵衛は知らずため息をつく。

くだらない。
実に、くだらない。

「卿らは、秀吉様の足を引っ張るためにここにいるのか?」

ぴしりと、空気が凍ったように引き締まった。
清正と正則が、射殺さんばかりに官兵衛を睨み付ける。
三成は眉を上げた。

「身内でいがみあっておれば、足並みなど揃うはずもない。石田殿は知っておろう、播磨の行く末を」

「……」

信長の中国攻めの折り、秀吉に従って姫路に来ていたのは三成だけだ。
その三成は、足並みが揃わず崩れていった播磨の地侍の姿を知っている。
それに翻弄され、死の淵に立たされた官兵衛の姿も。

「卿らの議論に意味はない。本質を見誤るな」

秀吉が世を去れば、どうなるか。
官兵衛には、見えすぎるほどにその未来が見えていた。
己はどうするか。
考えるまでもない。
秀吉が目指した、皆が笑って暮らせる世。
それを守るまで。
その邪魔をするのなら、いくら秀吉の可愛がっている彼らであっても容赦はしない。



三成らをおいて屋敷に戻る。
善助が出迎えた。

「殿、ご機嫌がお悪いようで」
「……」
「子飼い連中と、何かございましたか」

ぴくりと官兵衛の眉が跳ねる。
善助は官兵衛の心の動きに鋭い。僅かな変化を見逃さず、からりと笑った。

「図星、ですな。殿も人が悪い。あれらはうまく使えば価値がありましょうに」
「……」
「ははぁ、秀吉様があれらを可愛がるのが不満なのですな」
「……善助」
「まったく、殿は本当に秀吉様がお好きですなぁ」

笑う善助を、咎める気力もわかない。
図星と言われ否定できない自分がいることに、官兵衛は一人頭を抱えるのだった。

2014/06/15(Sun) 21:08 

◆三成と半兵衛と秀吉 

○キャラは無双だけど話は大河だよ





「……三成」

「……は」

弱々しい声で名を呼ばれ、三成は静かに頭を下げた。

倒れた半兵衛と、案じる秀吉たち。
どこか非現実的に思えて、ぼんやりと思考を巡らせていたときだった。

「……俺は、さ……三成の、力……すごいと思う。……戦が終わり、泰平の世に、なれば……俺みたいな人間は、いらない……。三成の力が……いっそう、求められる」

呼吸を乱した半兵衛は、そこで激しく咳き込んだ。
秀吉が体をさする。

「でもね、三成……もっと、人の心を……見なくちゃ。……大丈夫……三成、お前は、一人じゃないんだからさ……」

秀吉に支えられて体を起こした半兵衛が、三成に笑いかける。
常の飄々とした、人を食ったような笑みではない。
まるで我が子を案じるかのような、優しい笑み。

「……頼んだよ、三成……」

「……はっ、肝に銘じまする」

三成はただ、深く頭を下げることしかできなかった。
しきりに頷きながら半兵衛の肩を優しく抱く秀吉は、隠しもせずに涙と鼻水で顔を汚していた。

2014/06/15(Sun) 16:44 

◆ねねと半兵衛 

○キャラは無双だけど話は大河だよ





「半兵衛、官兵衛に何を言ったんだい? 慌てて帰って行ったよ」

秀吉の帰着を待たず、ねねにのみ暇を告げて去った官兵衛。
何かに急かされ追い立てられるような、しかしそれを楽しんでいるような様子に、ねねはすぐ得心がいった。
そして問い詰めてみれば、案の定。
半兵衛は常の掴み所のない笑みを浮かべた。

「やだなぁ、おねね様。俺は別になにも。ただ、ちょーっと尻を叩いただけですよ」

「半兵衛の叱咤はきついからねぇ。そりゃ、官兵衛も慌てるわけだ」

「おねね様のお説教には敵いません」

「へぇ? お説教受けそうになるといっつも逃げてるのに、よく知ってるね」

「あはは。それより俺、官兵衛殿好きだなぁ。おねね様は、秀吉様取られちゃって寂しいんじゃないですか?」

「ううん、あたしも官兵衛好きだもん。それに、うちの人が女の子じゃなくて官兵衛に夢中なら、そっちの方がいいかな」

「あ、なるほどー。──それじゃ、俺も行きます」

「うん、いってらっしゃい! 気を付けるんだよ!」

ひらひらと手を振って去っていく半兵衛。
いい組み合わせだと、ねねは嬉しそうに笑った。

2014/06/15(Sun) 16:32 

◆官兵衛と半兵衛 

○今日の大河に触発された話
○大河のストーリーをもじった感じ
○無双の両兵衛だけど無双にはない話





官兵衛は悲鳴を上げて飛び起きた。
弱った体が軋む。
しかしそれは現実をはっきりと認識させるには足りず、じめじめした空気と虫、そして絶望が貼り付いているような感触が肌から消えない。
腕を掻きむしり、自由にならない脚に力ない拳を落として無理矢理冷静さを取り戻したとき、襖を隔てて善助の声が響いた。

「……大事ない、下がれ」

もう何度目とも知れぬ夜。
眠るたびに心は薄暗い牢に戻り、自分の悲鳴で目が覚める。
そのたびに善助らが駆けつけては身を案じてくれることも、官兵衛にとっては負担になりつつあった。
そして、善助はそんな官兵衛の心境をも汲んで、一度声をかけるだけで静かに立ち去るようになっていた。



情けないと、そう思う。
終わったことだというのに、いつまで囚われているのかと。
いっそのこと、あのまま生を終えていたかったと。

「官兵衛殿、なぁにうじうじしてんの。らしくないなぁ」

だから、その声が聞こえた瞬間、救われたように思ってしまった。
これでもう、囚われたまま生きずにすむと。

闇でしかなかった視界に、ぼんやりと光が差す。
その光が形を成していき、再会叶わぬまま今生の別れを迎えた男の姿となった。

「半、兵衛……?」
「他に誰に見えるっての? ……大変だったね、官兵衛殿」
「……」

夢を見ているのだと思う。
いつもと違う、絶望からの解放をもたらす夢を。

「松くんにさ、渡しといたよ。まだ受け取ってないでしょ?」
「……なんのことだ」
「俺の軍配。俺はもう使えないから、官兵衛殿に任せるよ」
「……卿は、まだ、私に働けと言うのか」

もういい。
もう、十分だ。
どうか半兵衛、ともに連れて行ってくれ。

その願いは言葉にこそならなかったものの、半兵衛には届いたのだろう。眉を寄せ辛そうに表情を歪めた彼は、あのさぁ官兵衛殿、と、いつもの間延びした調子で言った。

「官兵衛殿には立派なご家来衆がいる。綺麗な奥方も、頼もしい御子も。そして何より、秀吉様がいる。それでいいじゃん」

「半兵衛?」

「諦めちゃだめだよ、官兵衛殿。てか、ずるいよ。俺だって秀吉様の世、見たかったのに。もっとずっと、官兵衛殿と一緒に秀吉様にお仕えしたかったのに」

「……」

半兵衛の声は、いつしか震えていた。
官兵衛は何も言わず、ただ耳を傾け続ける。

「だからさ、官兵衛殿。俺の分まで生きて。俺の分まで、秀吉様の世を見て。官兵衛殿の痛みは、俺が連れてくから」

「半兵衛……」

「いつか……ずっとずーっと先のいつか、官兵衛殿がおじいちゃんになってこっちに来たときにさ、あんなこともあったねって笑えるように、俺が預かっとくよ」

半兵衛の手が官兵衛の頬を包み込む。
暖かな何かに包まれた気がして目を閉じた官兵衛は、そのまま気を失うように眠りについた。

夢は、見なかった。



「善助、みなを集めよ。姫路に戻るぞ」

主を起こしに行ったはずの善助がすでに身を起こしている主の姿に慌てふためき、憑き物が落ちたような表情で下された指示に歓喜するのは、すぐあとの話。

2014/06/08(Sun) 23:31 

◆●半兵衛 

○野田福島の戦い





すべてを屠れ。
その命令に苦悩する秀吉を見て、半兵衛は一つ息をついた。
民を傷つけたくない。
そんな秀吉の考えが甘いことも、信長に逆らえばただではすまないことも、半兵衛は理解している。
ただ、だからと言って、秀吉の理想を支えたい気持ちは変わらないし、信長に唯々諾々と従うつもりもなかったのだが。

「秀吉様、俺が行きます」
民兵を討たず、敵将だけを。
その呟きを聞き取った半兵衛は、迷わず名乗り出た。



「とは言ったものの……」
露骨な策を取れば信長に怪しまれる以上、信長の命に従って戦っているように見せなければならない。とはいえ、乱戦の中、斬る相手を選ぶなど不可能に近い。
徐々に、しかし確実に蓄積していく疲労に舌を打って額に滲む汗を拭う。そんな、一瞬の隙だった。

「竹中殿!」

誰かの声が注意を喚起し、半兵衛が振り返り様に武器を振り抜く。
肉を断つ感触が鮮明に伝わり、半兵衛ははっとした。

「しまっ……」

気づいたとき、すでに半兵衛を襲った民兵は事切れていた。



「……ここはいい。行って」
ともに進軍していた秀吉配下の兵に告げ、半兵衛は自らが斬り伏せた民兵の傍らに膝をついた。
乱戦の中で斬る相手を選ぶなど不可能に近いことは分かっていた。
それでもやれると、やらなければと思っていたのだ。

なのに。

「……ごめん、秀吉様……」

呟いて唇を噛み締める。
一粒の赤が、地面を濡らした。

2014/05/06(Tue) 20:38 

◆●半兵衛と官兵衛 

「官兵衛殿!」

弾むような声に振り返って、官兵衛は渋面を作った。

「休んでいろ」

半兵衛が立っている。
へらへらと掴み所のない笑みを、青白い頬に乗せて。

「やだよ、この忙しいときに、俺だけ寝てらんない」
「卿は──」
「あ、吉継たちだ」

気づかれぬよう、ため息をつく。
半兵衛が無理をしていることは明らかだった。
常と同じ調子を装っていながら、時折言葉が詰まる。込み上げる咳が、胸の痛みが邪魔しているのだと、官兵衛は知っていた。
しかし案じたところで、大丈夫大丈夫と笑うだけだということも知っていたので、官兵衛には何もできない。彼の気が済むまで、待っていることしかできない。
普段は昼寝したいだのとほざいて諸事を官兵衛に押し付けるのに、本当に体調が悪いときほど無理をするのだから手に負えない。

「ねぇ官兵衛殿、あの子たち、可愛いね」
「……可愛い?」
「うん。素直で、一所懸命で」
「……、……素直?」
「俺、好きだなぁ、あの子たち」

半兵衛の視線の先には、淡々と言い争う三成と清正、それに発破をかけるような正則と、少し離れて静かに見守る吉継がいる。

「……仲良くしててほしいね、ずっと」
「……」
「……あーあ、これから楽しくなるっていうのに」

愚痴のように呟きながら、半兵衛が踵を返す。
珍しい態度だと内心では首を捻りながら、官兵衛は小さな背を追いかける。

「しっかり養生しろ。さすれば……」
「官兵衛殿は優しいね。ねぇ、俺のことはいいからさ、あの子たちのこと、見ててあげてよ。きっといつか、あの子たちは──」

言いかけて、激しく咳き込んだ。
慌てて体を支えようとすれば、力ない笑みとともに大丈夫だからと告げられる。
しばらくして落ち着いたらしい半兵衛は、さらに青白くなった顔で悲しげに笑った。

「頼んだよ、官兵衛殿」

官兵衛はもう、半兵衛を追いはしなかった。
まるで遺言のような言葉を噛みしめ、ただ小さくため息をついた。

2014/05/06(Tue) 08:36 

◆●吉継と左近 

○4微妙にネタバレ?
○どこかの戦い後の吉継と清正のやり取りを承けて





「清正さんと密談ですかい? 殿が拗ねますよ」

茶化すような声音に、吉継は思わず苦笑を浮かべた。
聞かれて困る話ではない。
ただ、昔馴染みとの雑談に興じていただけ。
苦笑が漏れたのは話を聞かれて困ったからではなく、声をかけた男が本気で茶化していると分かったからだ。
この男が、主人が信頼を置いている人間に負の感情や疑心を見せる愚を犯すはずがない。たとえ心中で何を考えていようとも。

「その時は宥めてやってくれ。臍を曲げたあれの相手は荷が重い」
「またまた、思ってもないことを」

もう一度、苦い笑みが浮かぶ。
吉継は、どうにもこの男が苦手だった。この男と話していると、見透かされているような錯覚に陥る。

「安心してください、聞いちゃいませんよ。遠目に清正さんを見かけたんで、こっちに何かあったかと見に来ただけです」
「疑ってはいない」
「ええ、承知してます」

ほら、まただ。
どうにも、自分の感情が駄々漏れになってしまっているように感じてしまう。

「……左近、お前はどう思う」

一人勝手に気まずくなった吉継は、話題の転換を試みる。
何がですとおどけたように首を傾げてみせて左近に、吉継は一言、豊国とだけ告げた。



続く

2014/05/05(Mon) 22:40 

◆●吉継と左近2 

○続き





「──まぁ、長くはないでしょうね」
「……」
「誰の目にも明らかだ。殿とて承知しておられる。ただ──」
「清正に」

左近の言葉を遮った。
豊臣の世はどうなるのか。
左近に聞くまでもなかった。
吉継とて、秀吉亡き後に起こるであろう事態はすでに想像がついている。清正に言われるまでもなく、徳川家康が実権を握ることも、そこに豊臣恩顧の臣の居場所がないことも、そして三成がその未来を予見していることも、その上で豊臣を守ろうと奮戦するであろうことも、吉継には想像がついていた。

「清正に言われた。もし三成とケンカすることになったら、俺は三成の側にいてやってくれと。子飼いでひとりぼっちだと寂しいからと」

そして、何より。

「へえ、清正さんがそんなことを」

自分が、最期まで三成の元に居続けるであろうことも。

「吉継さん、あんたなら、殿を止めることもできるでしょ」
「……」
「俺が諫めるとあの人、ほんとに不機嫌になるんですって。その点、吉継さんの言葉には不承不承ながら頷くでしょう?」
「……そうでもない。あれは頑固だからな。こうと決めたら、決して動くまい」
「やれやれ、困ったものですよ」

左近ががしがしと頭をかきながらため息をつく。
それを見て初めて、吉継の口元に穏やかな笑みが浮かんだ。

同じだと、気づいたから。

この男も、同じ未来を予見しているのだと、気づいてしまったから。

「……まったくだ」

目を閉じ、小さく笑う。
左近が不思議そうにしているのが伝わってきたが、無視を決め込んだ。

そして心の中で告げる。
眉を下げ、辛そうに笑んだ男に向けて。

──心配するな、三成はひとりぼっちになどならない。だから……

きっと遠くない将来、違う方向に歩き出す友に向けて。

──だからお前は、お前の思う道を行け。


はるか昔。
みなで過ごした長浜の景色が、吉継の瞼の裏に浮かんで消えていった。



***


あのやり取りが、なんだかすごく印象的で。
我が家の吉継さんなら、きっと「お前に言われんでもそのつもりじゃボケ」って恫喝するね。

今回の清正はさらに三成が好きになってますね。
ねね好き度もさらにバージョンアップで、さすがにちょっと引く(笑)

2014/05/05(Mon) 22:38 

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