Birthday企画2010

□ありきたりな言葉しか言えないけど
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昼。

修業の休憩時間。


私は少し離れた所にいるリーを見つめながら、よしっと気合いを入れる。

(大丈夫。何回も練習したんだから)

高鳴る鼓動を抑え、リーにゆっくりと近づいて行く。


「リー」


大丈夫、大丈夫…。
そう何度も自分に言い聞かせながら、私は声を掛ける。
その声は少し震えていたかもしれない。

「あ、テンテン!何です?」

笑顔で振り返るリーに、思わず動揺してしまう。

「あ、あのっ。今日はいい天気ね!」

何をテンパっているんだ、私。

「そうですね!とてもいい天気です」

こんな事を話したいのではないのに。
せっかく昨日もその前も、ネジを使って練習したのに、本人を前にするとまるで意味が無かった。

「え〜っと…」

口ごもる私を、リーは笑顔のまま不思議そうに見つめる。


「わ、私ね、リーと出会えてよかったわ」

「へ?いきなり何です?」

リーは私の言葉に、キョトンと目を見開く。

「いや…だからね…」

頭が真っ白になってしまった。

「あーもう!」

慣れないことは、しない方がいい。
リーに思い出に残るような、お祝いの言葉をプレゼントしたかったけれど…

「もうヤメヤメ!
全く練習した意味無いわ!」

「?」

キッとリーを見つめ、私は決意を固めた。


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