短編1

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17歳で海に出て、それからとある一つの海賊団の船長になって、「船長」なんて呼ばれると照れ臭そうに笑って、偉大な人に勝負を挑んで、息子になった貴方へ。






エースはいつもそうだった。
二人で街をデートしてても気になるものがあればすぐにそっちに行っちゃうし、ご飯と分かれば情事のあとのまったりした時間さえも無視して食堂へ行ってしまう。エースの誕生日だって二人で過ごしたことなんてなくて、いっつも仲間に囲まれて馬鹿みたいに笑いあってるような、破天荒な人間だった。
それで何回喧嘩したかな。何回別れる、大っきらいって言って貴方を傷つけてしまったかな。でもね、あなたが傷ついてるのと同じように私もいっつも傷ついてた。別れたくないのに別れたいって言って、大好きなのに大っきらいって言って。いつ貴方に捨てられるか怖くて怖くて仕方なかった。
それでもあなたは許してくれたね。いつも後ろからぎゅ、って抱きしめてくれてごめんなって。とろけちゃいそうな甘い声で謝ってくるから怒るに怒れなくて。ううん、私も悪いところがあったんだから許すのは当然。それで結局二人でベットに沈んで愛を深めあったね。それで夕飯食べ損ねて、深夜にこっそり二人でキッチン物色してたらサッチに怒られたよね。
凄く悲しい事があったときだってずっと抱きしめて慰めてくれたよね。隠し事してた時も俺はそんなこと気にしてねえからお前も気にすんなって言ってくれたよね。そう言えばエース、自分のお父さんのこと話すときちょっと震えてたでしょう。私気にしてなかったよ。正直言ってしまえば、非情かもしれないけどエース以外には興味ないもの。エースが何処で、誰から生まれただなんて。私は興味ないの。エースがいてくれれば、それでいいのよ。

いつだってエースのことを想ってた。ううん、今でも思ってる。顔、表情、仕草、癖、声、ぬくもり、優しさ。
全部そろってエースなのよ。
私はエースの物で、エースは私の物だった。お互いがお互いに依存しているこの関係がとても居心地がよくて、この人こそ私の運命の人かしらって、柄にもなく思ってしまうほど貴方は素敵な人なのよ。


貴方と過ごす時間が大好きだった。
貴方と体を重ねる行為を愛おしく思った。
貴方と食べる食事ほどおいしいものはなかった。
貴方と眠る時間ほど幸せな時間はなかった。


貴方がいたから、貴方がいなきゃ、私は生きていけないの。海楼石をつけられた挙句海に投げ入れられたように、力も入らない、呼吸もできない、もがく事も出来ない。
貴方がいないから。



ねえ、エース。
私はあなたを幸せに出来ましたか?
私はあなたからたくさんたくさん幸せを、愛を、勇気をもらったよ。
少しでも貴方にあげれたかしら?

今は少しお休みしているだけ。
もう少し休んだら、走って走って走って!
私なんか置いて行って!貴方の思うままの海へ!


私はまだまだやる事があるみたい。
マルコなんかまったく生気がなくって。いつもの鉄拳にすら力が入ってなくて、おかしいでしょう?
私もね、知らない間に瞳から水が落ちてきて、肺に空気が入らなくなって、足が震えだして、その場にしゃがみこんでしまうの。
貴方がいないと、みんなが、私が狂ってしまう。


置いて行ってなんて言ったけど、私はやっぱり貴方といたい。
いつまでもいつまでも、貴方といられることが、私の幸せなのよ、エース!



17歳で海に出て、それからとある一つの海賊団の船長になって、「船長」なんて呼ばれると照れ臭そうに笑って、偉大な人に勝負を挑んで、息子になって、


そして、
いつまでも私の太陽である、貴方へ。


とまろうとしないきみへ。
(走って輝いてこそのあなただから!)

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