短編1

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「エース先輩!」

「んー、どうした?」


ポカポカ陽気の平日。
屋上でさぼってた俺に、誰かが呼びかける。
その声は愛しい彼女の物だった。
寝起き一発目に名無しさんの声を聞けるなんて、俺は相当幸せだと思う。


「またこんなところでさぼってたんですか?」

「だってこんな気持ちのいい日にさぼらねえほうがおかしくねェ?」

「またそんなこと言って…。ほどほどにしないと出席日数足りなくなっちゃいますよ?」

「そーだなあ。そうなったらお前と一緒に卒業するさ」

「まったく。冗談は休み休み言ってくださいね!」


彼女と学年が一つ違うと言うのは、彼女にベタ惚れしている俺にとって正直辛いものがある。
授業だって一緒に受けれねえし、一緒に修学旅行にも行けねえ。行事で一緒に受けれるものは、校内一斉清掃の時くらいだろうか。



この屋上は、彼女の教室がよく見える。
そして嬉しい事に名無しさんの席も窓際で、名無しさんが髪をかきあげたりしてる仕草とか、隣の席の子と話してるのがよく見えるのだ。
そんな彼女をここからみるのが俺は好きだった。学年が違う俺らはお互いに勉強している姿が見れない。
だからここは授業中の彼女をみれる唯一の場所で、とても気に入っている。足しげく通っているとどうやら彼女も俺の場所を覚えてくれたようで、時々会いに来てくれる。


だがその彼女が、今日は見えない。なぜなら彼女もさぼって、俺の隣に座っているからだ。
終業のチャイムも鳴っていないのにここにいるということは、さぼり、と言うことしかあり得ないだろう。


「名無しさん、お前もさぼりか」

「あれ?今更ですか」

「お前こそ、出席日数足りなくなるんじゃねえのか?」

「私は大丈夫ですよ。たまにしか授業さぼりませんから。…まあ、最悪の場合はルフィ君と卒業しますよ」

「…っ、駄目だっ!」


突然ガバッと起きあがった俺に、名無しさんはびっくりしたように目を丸くした。
起きあがった反動で、俺の頭に置いてあったオレンジ色のテンガロンハットが床に落ちた。

「お前は良いかもしれないけどなあ!もしお前がダブって、俺だけ卒業した時のことを考えてみろ!俺は二年間、お前のいない大学で一人寂しく飯を食うんだぞ!」


まくし立てるように、少し強めで早口で言うと、彼女はくすくす笑い出した。
笑い事じゃない!一大事だぞ、俺にとって!


「マルコ先輩やサッチ先輩がいるじゃないですか」

「お前と一緒じゃなきゃ意味がないんだ!」


この想い、どうしたらお前に届くだろうか。
俺はお前のことが好きで好きで好きすぎて、いないと気が狂ってしまいそうなくらいに好きなのに。


「一年くらいはどうにか我慢するけどよ…。二年は無理だ、と言うか嫌だ。」

「私も嫌ですよ。我儘言うなら、エース先輩に留年してほしいくらい」

「お前に言われるなら、留年すっかなー」

「やだ、私呼び捨てなんて慣れませんよ!」

「じゃあ今から練習ー!ほれ、言ってみ?」

「え、えー…、エース………先輩」

「はいダメー。もういっかーい」

「ええぇええ!!!」




僕のことを好きな君が好き
(おいポートガス!自分の教室に戻りやがれ!)
(いいじゃねえか。おれ留年するしよー)
(ばかも休み休み言ってください、エース先輩!)

でも少し嬉しい、なんて思っちゃったり


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