長編

□わがままけいたい
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「おはよう、猛さん」

「んー…、まだ眠い…」


もう「おはよう」と言うには遅い時間。
そんな時間に私たちはようやく起きた。遅い時間に就寝になったのは…、まあ、いろいろ理由がある。


そんなこんなで、遅い時間の起床。
私は今日、仕事が休みだからずっと寝ててもいいんだけど、さすがに家事をやらないわけにはいかないし、やりたいこともあったのでベッドの周りに落ちている二人分の服を持って脱衣所にある洗濯機に投げ入れた。

「名無しさんも、もうちっと寝てればいいじゃんかー。せっかくの休みなんだからさー」

「せっかくの休みだからこそしたい事がいっぱいあるんです。ほら、今日はお天気がいいんですしお布団干したいんです。猛さんもお手伝いしてください」

「んー…。もうちょい寝かせてよー…」


語尾が延びるのは、眠い時の猛さんのクセ。別に嫌ってわけじゃないし可愛いって思ってるんだけど、さすがに今日中に家のお掃除をしちゃいたい私は少しイライラしていた。

「ほら!早くしてください猛さん!布団叩きで叩きますよ!」

「んー、わかった。わかったよ」


ぶつぶつ文句を言っている猛さんをしり目に、私はシーツやら掛け布団をどかし、ベランダに布団を干しに行った。
ちょうどいい具合に洗濯機もまわし終わって、ついでに洗濯物も干すことに









「よっし、終わった」

二人分だから、そこまで量は多くはないんだけど、布団もあるし、それになによりここ連日降り続いていた雨の所為で洗濯ものがろくに乾きもしなかった。その洗濯ものたちも一緒にほしたら、ベランダが洗われた洗濯ものでいっぱいになった。
晴れてるし、空はきれいだし、洗濯物も干せたし!うん!いい気持ち!

そんなとき、階段を駆け上ってくる音が。ETUのテーマソングを歌いながら。


「あ、電話だ…」


ETUのテーマソングって事は電話で、ディスプレイを見ると会話の上司から。
なんだろう?そう思いとっさに出た。


「はい!……、あ、はい。はい。…大丈夫です。はい、はい、了解しました。はい、失礼します」


用件は、仕事のことだった。
どうやら部下がミスをしてしまったようだから、明日にでも励ましつつアドバイスをしてやってほしいとのこと。
あの子と仲いいのは私くらいだったから、それを考慮してわざわざ部長は電話をかけてきてくれたらしい。
よく見てる人だなあ、と思い携帯を待ち受け画面に戻す。
するとそこには、ふてくされてる携帯様が。


「え、どうしたんですか、猛さん?」

「行くのかよ」

「え?」

「仕事。今日せっかくの休みなんだろ?今の電話呼び出しとかだったんじゃねーの?…行かせないかんな!」


どうやら私が呼び出されて休日出勤をしてしまうと思ったらしい。行かせないからなって、貴方、私に連れられて行くんでしょうが。まあ、でも今日は仕事に行かないけれど。
その旨をつたえると、どこか安心したようないつもの笑顔でニヒっと笑ってくれた。


「せっかくの休みなのに、仕事行っちまったらお前にくっつけねーじゃん」


…ひっつかれたら、掃除がはかどらないんだけどな…。
そんな願いもむなしく、私は一日中猛さんを背中に背負ったまま掃除をするのだった。


わがままけいたい
(猛さん…、重い…)
(うそつけー。ストラップだって何も付いてねーし本体も結構軽い奴なんだぜ俺)
(携帯の時じゃなくて、今の抱きついてる時のあなたが、です!)
(いーじゃねーか。俺の愛の重さに比例してんだよ)


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