なりゆきまかせ
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「熱高いな……。新しい氷枕持ってくる。
近藤さん、そんなに気になるなら、そばについてやったらどうだ」
ずっとこっそり(のつもりで)のぞいていた近藤さんが、おずおずと入ってきてそばに座った。
「茜ちゃん……」
「すぐ戻る」
氷枕を持って土方さんが出て行くと、静まり返った部屋に近藤さんと二人きり。
近藤さんがあまりにも心配そうな顔をしているから、安心させたくて笑ってみせた……つもりが、力が入らなくてふにゃふにゃした情けない顔になってしまった。
「茜ちゃん、辛くないかい? 暑くない? 寒くない? のど渇いてない? 何か飲む? 薬飲むなら何かお腹に入れてからだからね」
堰を切ったように一気にまくし立てた近藤さんに、今度は苦笑いを返した。
「とりあえず、寝かせて下さい……」
「あっ……うん、ごめんっ!」
またシュンとしてしまう近藤さん。
そわそわしたり、元気になったり、シュンとしたり、忙しい人だなぁ。でも、私のことを心配してくれてるのはよく分かる。
「近藤さん、ひとつだけ……お願いしていいですか……?」
「何だい?」
「あの……私が寝るまで……その……そばにいて下さい……」
なにを子どもみたいなこと言ってるんだと呆れられるかな……と思ったが、近藤さんはニコッと笑ってくれた。
「なんだあー、茜ちゃんは甘えん坊さんだなぁ。なんなら、手も繋いじゃう?」
近藤さんは冗談のつもりで言ったのかもしれないけど、私は布団から手を差し出した。
「お願いします……」
ふわり、と近藤さんの大きな手に包み込まれた。
あたたかい、優しい、安心する手。
「ずっとそばにいるから、ゆっくり眠りなさい」
「……はい」
近藤さんの手からは、眠くなるオーラでも出ているんだろうか?
淋しかった気持ちが満たされて、あっという間に眠ってしまっていた。
眠りに落ちる途中、私って近藤さんのこと好きなのかなぁ……なんて思ったり。
いやいや、そんなまさか、ね……。
「……寝ちゃったか」
安らかな寝息を立てる茜の顔を見ながら、近藤はほう、と息を吐いた。
「なんとかごまかせたか……。あの「そばにいて下さい」はヤバかった……。危うく勘違いするところだった……」
茜が自分を好きだなんて。
まさか、そんなことあるはずがない。茜は銀時のことが好きなのだから。
仮に、茜が自分を想ってくれても自分にはお妙がいるから、その気持ちに応えることはできないだろう。
「……って、なにを有り得ないことを考えてんだ俺はッ!」
熱で火照る彼女の手を、少し力を入れて握りしめた。
この手をずっと離したくない、と思ったのは自分の胸に秘めておこう。
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