なりゆきまかせ

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「ちょッ、待て待て!!
 茜ちゃん本気!? 銀さんよりもマヨラやドSを選ぶの!?」

「いや、あの、そういうんじゃなくて……」

 勝ち誇った顔の土方さんを、思いきり睨みつける坂田さん。

 あー……屯所行くの止めた方がいいのかな……。
 屯所に行けば坂田さんが怒るし、行かなければ土方さんが怒るだろうし。
 風邪引いてしんどいのに……どっちを選ぶとか考えるの正直面倒くさい……。

 思考が停止してボーっとしていると、「銀さん、来てますか?」という新八くんの声。

「……チッ。あー、いるよ」

「茜さん、具合悪いのに騒がしくしてすみません。
 あ、土方さん、こんにちは。銀さん、依頼人が来てますよ」

「今日は都合悪いって断れ」

「でも、せっかくの仕事なんですよ!」

「ぱっつぁん、男には時には仕事より大事なモンがあるんだよ!」

「仕事より大事なモンってなんですか!?
 うちに今必要なのは仕事です、ぶっちゃけ金です!! 生活かかってんですよ!!
 てゆーか、こんなところでギャーギャー騒いでたら茜さんに迷惑だろうが!! 早く行きますよ!!」

「……チッ、わーったわーった!!」

 新八くんに急かされて、坂田さんは渋々ブーツを履いて、私を振り返った。

「茜、今回は病気だし仕方ねェけど……。いいか、獣の巣に行っても貞操はしっかり守れよ!! 茜の処女は銀さんの……」

「いいから早く行け!!」

 土方さんにげしっ! と蹴り出され、新八くんに引っぱられながら坂田さんは帰っていった。

 ボーっと二人を見送ってから、土方さんに促されて、しばらくの間お世話になる為の荷造りをした。

 土方さんの運転で、パトカーで一緒に屯所に向かう。
 とりあえず、二人が喧嘩しないで良かった……。










 屯所に着くと、土方さんから連絡を受けていた近藤さんが玄関で待ち構えていた。

「お世話になります……」

「茜ちゃん、熱があるって!? 布団敷いてあるから、すぐ横になりなさい!!」

「はい、ありがとうございます」

「大丈夫? 歩ける? おんぶしようか?」

「近藤さん、大丈夫ですから」

 あんたは世話焼きのお母さんかってくらい、いろいろと気にかけてくれる近藤さん。
 正直うざい……けど嬉しかったりもする。

 客間に通されて、敷いてあった布団に横になった。
 熱のせいで体も消耗していたんだろう、横になるとだるさが全身に広がるのが分かった。

 その後、屯所の診療所の松元先生に診てもらい、薬も処方してもらった。保険証ないから本当に助かった……。

 安心したら気が抜けたのか、布団でぐったりしていると、障子の隙間からそわそわしながら近藤さんが心配顔でのぞいているのが見えた。

「……近藤さん。心配なのは分かるが、ゆっくり寝かせてやれ」

「ト、トシ……」

 呆れ顔の土方さんが入ってきて、私のそばに座った。

「悪いな、騒々しくて。
 松元先生が疲れが出たんだろうってよ。良くなるまで、ゆっくりここで静養しろ」

「はい、すみません……」

「謝んな。お前もうちの人間なんだから」

 そっと伸ばされた土方さんの大きな手が、私の額に触れた。


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